日野プロト 緒戦を飾る


Hino Proto Fuji w600

 【出席者】

   第二研究部 主査 課長 池田 陽一
   実験部車両実験第一課 石井 操
   日本オートクラブ理事 塩沢 進午
   ドライバー 山西 喜三夫
   ドライバー 塩沢 勝臣

 8月14日、静岡県富士スピードウェイでくりひろげられた、全日本スポーツカーレース,初出場の日野プロトタイプは、ポルシェカレラ、フオードコプラなど世界の名車に伍して、みごと3位に入賞した。

 そこでこの日野プロトタイプ製作の第一線で活躍された池田課長、石井係長と本大会の主催者であり日本オートクラプの理事として活躍されている塩沢進午氏そして日野プロトタイプを駆って堂々3位に入賞されたドライバーの山西喜三夫氏と塩沢勝臣氏にお集まりいただきいろいろお話をお聞きしてみた。

結集された日野の力、苦労もとんだ好成績

【司会】 本日はお忙しいところをお集まりいただきありがとうございます。大会では初出場にもかかわらず第三位という優秀な成績でしたが、これまでにはいろいろとご苦心談があることと思いますので、そのへんから一つお話し下さい。

【池田】 その前に日野プロトタイプが製作されるまでの経過を簡車に説明しておきます。ご承知のように昭和38年に第一回の日本グランプリが鈴鹿サーキットで開催されたときに、自販が中心となってコンテッサ900が出場し、優勝するという非常に優秀な成績をおさめました。しかし翌39年の第二回大会では、残念ながら満足すべき成績をあげることができませんでした。

 そこで当社としても従来までのツーリング部門の強化はもちろん、他の部門での日野はこれからどうすべきかということになったわけです。そして一応の基本線がきまったのが39年の6月か7月だったと思います。その後40年3月には社内展示をすることができるまでになったのですが、40年10月と思いますが国際自動車連盟の国際スポーツ法典が改定になったのです。その中で最も大きい変更が最低地上高で、従来までの70cmから100cmになったわけです。そこでこれにあわせた車ができたのが今年の2月です。

 今年の日本グランプリに出場というような話しもあったんですが、日程面などいろいろと問題がありまして、残念ながら出場できませんでした。しかし、なんとか今年中にひのめをみたいということで、このレースを選んで出場したわけです。まあ、初出場としては一応の成績をあげることができましたのは関係者全員の力ですね。

 それから先ほど苦心談ということですが、私の場合はどちらかというとながめていたほうで、ただ道をそれないように注意していただけでしたね。

【石井】 私の場合もそれほどではありませんでしたね。いままでとくらぺれば台数も少ないですし。ただ初めてということで車の質的なものからいえばいくらか苦労はありましたが……。

【塩沢進】 そうはいうものの池田さん、石井さんの苦労は大変なものだったと思いますね。とにかくレースでは出走までの最後の一分まで最高のものにもっていこうとしますから、全然いきをぬくところがないわけですよ。まあ、いいかえればスタートにならべるまでがレースだともいえると思いますね。

【司会】 ドライバーの人たちはいかがですか。

【塩沢】 私の場合はこのレースのオーナーですから直接関係はしませんでしたが、うちのクラブの山西君と弟の勝臣がドライバーとして参加したわけです。

【山西】 実際に製作にあたられた人達からくらベれば、私達ドライバーは楽です。

【池田】 時期が進んでくると車とドライバ-とは一対一でゆかなければならないんです。たとえばシート位置をドライバーに合わせるなどね。そのほかにもいろんな意味で頭をつっこんでもらっています。

【石井】 ドライバーの人達はどちらかといえば、本番のレースより練習のときのほうが苦しいんじゃないかな。

【塩沢勝】 そうですね。練習のときのほうがレースよりスピードをあげて走りますから。

【石井】 直線で200km/hはだすものね。

四位との差は約一周、後半ペースをおとす

【司会】 山西さんは三位に入賞したわけですがいかがでした。

【山西】 まお、ふりかえってみて三位ではありましたが快心のできといえますね。

【池田】 車を作ったほうの立場から車のできをいうと四、五分のできでした。

【山西】 時間的にはもう少し早く走れたんですが、四位のポルシェ組との差がひらいたので後半少しペースをおとしています。

【司会】 四位を約一周はなしましたね。

【山西】 みえるところまでいきましたから、あと一周あればつかめたと思います。

【司会】 ジャガーEがリタイヤしないでいれば、もう少しおもしろかったと思うんですが……

【塩沢進】 いたら大変ですね。見てるほうからいえばおもしろいでしょうが、メカニックの人たちやドライバーは、勝ち負けということではなくかなり急がしかったでしょう。

【司会】 しかし、一位のポルシェカレラ6と二位のフォードコブラは速いですね。

【塩沢進】 たしかに速いですね。しかし、レースに出場する車にはそれぞれ生れてきたときの目的というのがあるわけです。たとえばカレラ6の場合50台という限定生産にポイントをおいています。ところが日野の場合はどうかといいますと、おそらくレースにみつためだけにつくったものではなく、量産車との間になんらかの結びつきがあると思うんです。ですからさきほど池田さんが五分のできというのは、このことに関連していわれたのではないでしょうか。

【池田】 そうなんですよ。主力が量産車の部品ですから、大概のものはきまってしまうという制約はありますね。

抜群のコーナー速度、安定性は出場車随

【塩沢進】 それからさきほど直線でのスピードの話しがでましたが、もう一つ大事なことは、富士スピードウエイでいいますとS字カーブから最終コーナーまでの、コーナーリング速度がどのぐらいであったかということが重要なんです。その点日野プロトタイプは直線コースのスピードとあまり違わなかったんではないですか。

【塩沢勝】 S字カーブの最後のあたりで160km/hぐらいです。とくかくコーナーリングはいいですね。コーナー速度はうちが抜群です。

【山西】 私がいままで乗った車の中では最高ですね。S字カーブから最終コーナーのところではコブラがじゃまになったほどです。だからカーブの多い鈴鹿サーキットならコブラといい勝負ができると思うんですが。

【塩沢勝】 たしかにうちに有利だけどちょっと話が大きすぎるよ。コブラの力ってすごいですよ。あのときもあと三周のところラジエータの水がなくなったんだけど、そのままスピードを落さす走りきってしまつた。

【塩沢進】 しかし、カレラ6やコブラが強いと思うのは、いつもかたまった状態、ようするに手を加えなくともいつでも走れる状態におるということです。その点日本グランプリで優勝したプリンスR380もスピードは優秀ですが、まだまだかたまってはいないですね。

残念なP-3の欠場、時間は日野車が勝る

【司会】 ところがカレラ6やコブラは日野にくらべるとエンジン容量が大きいわけですが、日野と同じクラスで活躍しているダイハツのP-3が今度出場しませんでしたね。

【塩沢進】 主催側としてぜひ出場してほしかったんですが。

【塩沢勝】 P-3が出場していれば僕らもおろしろかったですね。でもうちの方がよかったと思うんです。P-3が日本グランプリに出場したときのラップタイムが、今回ほどトラックコンディションはありませんでしたが一周(6km)2分26秒から2分29秒ぐらいでした。うちはだいたい2分24秒か5秒だったと思います。

【山西】 レースの正式な平均ラップタイムは一周2分23.7秒です。これは前にもいいましたように4位のポルシェ911と差がひらいたので、後半だいぶおとしています。

【石井】 P-3とは練習のときに一度いっしょになったことがあったけど、あのときP-3は24秒台だったね。うちは少しおさえようといったんだが20秒くらいだった。

【司会】 ところで山西さんはたいがい左ハンドルなんですがなにか理由が.....

【山西】 好き嫌いでしょうね。それと計算からいうと左のほうが速いはずなんですよ。塩沢君は右のほうが速いといいますが.....

【塩沢勝】 でも富士のように右まわりのコースは右ハンドルのほうが有利だろう。

【山西】 たしかに富士は右が有利だということはみとめるよ。でも船橋は左のほうがいい。

【司会】 鈴鹿はどうなります。コースが途中で交叉している関係で左右のまわりかたがあるようですが。

【塩沢進】 鈴鹿の場合はどこで勝負するかによって違ってくるわけです。

【石井】 耐久レースで運転を交代するようなときにどうする。まさか両方つくるわけにはいかないし。

【山西】 そのときは僕にあわせてほしいな。

待たれる晴れの舞台、全日野の期待背って

【司会】 塩沢さんは主催者としてあれだけ大きな大会を開催しているわけですが、いろんな意味でもご苦労も多いかと思いますが.....

【塩沢進】 苦労というより一番注意していることは、レース中に車が故障したときドライバ一がどのようにきりぬけるかということと、その故障した車がほかのドライバーがどうスピードをおとさずにきりぬけるかという点です。その点この間は二つのレースともに平均150km/h近くにスピードで走っていあますが、一度もレース中に救急車はもちろんレッカー車もでませんでした。まあ、選手権レースに出場するドライバーのウデは、現在の日本のもっている最高の人達ですね。ドライバーは車に能カさえあればある程度までは走ることはできるんですが、問題は故障にしたときでいわゆるレーシングドライバーと遊びのドライバーとの違いですね。

【司会】 事故の経験はありますか。

【山西】 本番のレースではまだありませんが、練習中にはびっくりしたことをあリます。

【塩沢勝】 僕と練習中には相当ありますね。どうしも練習中は車の限界まで走らせますので無理が入るんでしょう。

【司会】 そんなとき、こわいと思いませんか。

【塩沢進】 こわいと思うようになったらやめたほうがいいですね。

【塩沢勝】 でもこわいと思ったことは何度かありますよ。しかし、レース中はそんなことより早く前の車がみえないかということだけですね。

【司会】 お二人はレーサーになられて何年ですか。

【塩沢勝】 僕が初めて乗ったは、第一回の日本グランプりですから今年で四年になります。

【山西】 僕も四年です。ただ16オのときから単車に乗っていますからそれを入れると八年です。

【池田】 ニ人ともまだ24オですが、ウデはいいですね。羽村のテストコースの直線で同じ車で僕が走ると60~70km/hで、車両実験の連中が走ると120km/hぐらい、この二人が走ると150km/hですからね。

【司会】 まだお二人とも若いんですね。

【石井】 でも山西君はもう子供さんがいるんですよ。家族とくつろぐヒマなんてあまりないでしよう

【山西】 それはどうでもありませんが、まあ、レースのないときに子供とちょっとあそぶといった程度ですね。

【石井】 それにおもしろいことには二人とも、レース以外とくに街の中で運転するのをいやがるんですよ。

【塩沢進】 ニ人だけでなくそういった人がレーサーに多いですよ。レース場にくるにもへルメットをぶらさげてバスとか電車に乗ってくる。

【塩沢勝】 レースで200km/hで走るより、街で走るほうがこわいんです。

【司会】 それだけむだな神経をつかいたくないということなんでしうね。ところで外国での自動車レースはどうですか。

【塩沢進】 とにかくすごい人気ですね。欧米では競馬のつぎの観客動員数をもっており、野球んかよりずっと上です。

【司会】 有名なレースにはどんなのがありますか。

【塩沢進】 車種によって違ってまして、国名を上につけたレースは大体フォーミュラで、OO何時間といった耐久レースはプロトタイプが主力になって行なわれています。フォーミュラIのほうで有名なのは、こんど日本で開催されるといわれていますアメリカのインディアナポリスを中心に行なわれるインディ500マイルです。これは規模といい、観客動員数といい、車の質といい世界最高ですね。それにつぐのがディトナレースとかインターナショナルレースです。プロトタイプではル・マンで行なわれるル・マン24時間耐久レースが有名ですね。

【山西】 日野も早くそういったレースに出場したいですね。

【池田】 すぐにどうこうということではありませんが、考えられないことではありませんね。とにかく若い人達のレースに対する関心は非常にたかまっていますから今後ますます盛大になるでしょう。そのためにはわれわれも優れた技術を開発して行かなければと考えています。

【司会】 時間もきましたようなので皆さまの今後の活躍をお祈りしてこのへんで終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

(日野社報、昭和41年9月より抜粋)


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