ディーター・ラムス(Dieter Rams)展 - 府中市美術館(2009年6月18日)
工業デザイナーとして、シンプルさと機能美で40年在籍したブラウン社(Braun)で多くので製品デザインを排出し、製品デザイン&設計で世界に多くの影響を与えたディーター・ラムス(Dieter Rams)氏の作品の展示会が府中市美術館で開催されました(7月20日終了)。世界の工業デザインに絶対的な影響を与えたと考える彼の作品を一同に拝めることは一生の内で希な無いチャンスとばかり行って参りました。
ラムス氏の詳細は様々なWikiなどあるのでここではあえて取り上げませが、1950年代後半からの製品の機能を表す簡潔・明鏡はデザインは今でも新鮮です。またその当時の他社の製品を思い出すとデザインのルーツと感じざるを得ません。ボク自身はデザイン屋でもありませんがその考えに共感をしております。
以下は府中美術館でも展示されていた気にいった代表的作品です:
ラムス氏の諸々のインタビューをレビューすると「簡単・明解(simplicity)なデザイン」と「誠実(honest)」と言う言葉が必ずあると言われています。そして有名は「Rams' 10 principles for good design(良いデザインのためのラムスの10ヶ条)」と言うものがあるとのことです。それは:
- Good design is innovative(良いデザインは革新的である)
- Good design makes a product useful(良いデザインは製品を実用的なものにする)
- Good design is aesthetic(良いデザインは美的である)
- Good design helps us to understand a product(良いデザインは製品を理解しやすくしてくれる)
- Good design is unobtrusive(良いデザインは謙虚である)
- Good design is honest(良いデザインは誠実である)
- Good design is durable(良いデザインは長寿命である)
- Good design is consequent to the last detail(良いデザインは細部にいたるまで首尾一貫している)
- Good design is concerned with the environment(良いデザインは環境を配慮する)
- Good design is as little design as possible(良いデザインは可能な限り簡潔のものである)
これ以上のものは必要ありません。何と簡潔明快なメッセージであり、特に氏の人間性をも表しているものと考えます。府中美術館では誠に高貴なものを拝ませていただいたと言う気分になりそこを後にしました。一生の宝ものとなりました。
今回展示されてラムス氏含め300点のブラウン製品はブラウン社の所有品で世界各地の美術館を回っているようで、府中の次は英国のロンドンとの事でした。企業自身が自社の製品を偉大なる個人の名前と共に世界に文化あるメッセージを自ら絶え間なく発信していることに対して、モノを怒濤の如く販売し,後は何も無しと言う多くの日本企業と文化とは全く異にするものです。昨今、「Sustanable Enterprise(持続性ある企業)」と言うれるようにそれを実行しているのがブラウン社と考えます。文化の香りを感じる会社の製品は生活の中で使おうというものです。
実は今回の展示の最後の一角がラムス氏の意思を継いだと言うか明らかな流れを汲むデザインの製品の一つとしてここ数年のアップル社の製品が展示されていました。アップル社の初期の製品、Macintosh SEなどはその筐体の裏側に関係者の名前のサインが刻まれており、そのデザイナーはドイツの会社の人間と聞いておりました。しかし、ある時代スティーブ・ジョブ氏が去ったいたある時期はデザインを無視し、機能を無視した製品(特にある機種で日本IBMが機能含めてデザインしてしまった)となってしまい暗黒の時代でした。結果的に企業業績も地に落ちて行きました。
その後、ジョブ氏復帰以来徐々に製品デザインについて正常化したと見ております。一つにJラムス氏直系の弟子であるJONATHAN IVE氏をデザイナーに起用し、見事にパソコンの機能をデザインを通して具現化したのです。90年代後半以来のiMacに始まり、今では一連のiBook/MacBookのクリーンさは疑う余地なし、そしてiPodやiPhoneではさらに機能が何であるかデザインがどうすべきかを見事に主張していおります。
手元ににあるiPodsやiPhone、知らない間にこんなに棲息するようになった!上の丸いiMac(第二世代)はもちろんJONATHAN IVE氏のデザインです。
【余談、ソニー考察】
そして直接は関係ありませんが、デザインが明確に機能を支配していた60年代のソニー製品、左はTC-355( 1968年)、たったこれだけの操作レバーで3ヘッド機能を持ち最高のソニーサウンドを演出した、今でもソニーのベストなものとして、動態保存している。右はTV-330、これもデザインに惚れ購入した。欧州圏ではインテリアの一部しても人気を博し、東欧では80年代後半なで販売された長寿製品だった。
70年前後の日本のソニー製品には機能をうまくデザインされていました。正にシンプルに製品機能をデザインしていました。初期のソニー製品をさらにデザインが磨きを掛けたものと信じます。その時代の製品デザインにはラムス氏の意思みたいなものを感じざるを得なく、当時の製品デザイナーは何がしらかの影響を受けていたと分析しております。しかし、この後の70年代半ばから今日に至るまでそれは製品デザイナー不在のごとく機能デザインの欠落、複雑な機能を複雑に表現するがごとく一貫性の無いのアウトプットとなり、今日の業績不振に至ってしまったと分析します。すなわち企業として文化を感じるメッセージが製品を通して語ることが無くなったのです。
【そして日野コンテッサ1300セダン】
日野コンテッサ1300のデザイン考です。1300のセダンのインパネですが、これもラムス氏のコンセプトと共通するものを感じざるを得ません。簡潔且つ明解なのです。ギミック(余計なこけら脅し)は微塵もありません。ジョバンニ・ミケロッティ氏のデザインの考え方がそのまま形になったものと考えます。
当時の国産にも良いインパネは多くあったが機能的に一貫性を感じるのがベストは日野コンテッサ1300セダンのこのインパネである。多くのクルマはおそらくデザイナーの意思に反して多くの意見を取り入れギミックを受け入れざ得なくなり、一貫性を欠けてしまったと思う。同様に日野コンテッサ1300クーペも当時の日本的スポーツカー願望のギミックを感じています。本来はコンテッサ900スプリントのような機能や目的が明解なデザインであるべきだったと思います。
【余談:勢い】
ラムス氏の作品に改めて感動し、ブラウン社の企業文化に敬意し、その後ほどなくして、勢いでしょうか、コーヒーメーカーをブラウン社のものに買い換えました。生活の一部として良いデザインと文化をもった製品に接していることが必要と思う毎日です。
この丸さ加減は第二世代iMacを逆さにしたように見えてきます!
(SE、オリジナル:20090905)
(Modeified, 2019.1.12)
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