2010.5.21:自動車技術会、コンテッサ絶命 - 日野コンテッサは絶滅種か!


 この時期にパシフィコ横浜で開催される自動車技術会(所謂、JSAE、米国のグローバルのSAEに相当と理解)の展示会を昨年に引き続き見学して参りました。毎度の事ですが新しいテクノロジーやビジネスモデル、また日本を中心としたOEM各社とサプライヤーの生の展示物に接して進化を見るのが楽しみです。

 昨年に引き続き、今年の展示もあまり目新しいものは感じませんでした。昨年来の経済の関係か、前回から現場密着(短期で金になる)の展示に変っているというのが印象だし仲間の共通意見です。トヨタ自動車も昔は繊維機械メーカーでそこからビジネスを変えたベンチャーである訳で、スズキ自動車も同様に二輪のベンチャーに転身した過去があり、壮絶な時代があったのです。今のグローバルなビジネスの大変化を考えればそのくらいの変身をしても良い、またはそのくらいのプレゼンがこのJSAEの場であっても良いと思う訳です。期待しすぎかも知れません。先週、某OEM関係者とのお話で話題にもなったOEMの将来の社長はメカ・エンジン屋でも財務・管理・生産畑でもなく、電子・電気屋、さらにソフトウェア屋であっても不思議ではないと言うものです。

【トヨタ車体ブースの年表:10.19 トヨタ、日野の業務提携 コンテッサ絶命】

20100521 JSAE Toyota

 何もここに書く事はありません。「コンテッサ絶命」が鮮明に目に焼き付きました。

 そんな中、当サイトオーナーとして最もインパクトがあったのがビジネス・技術的に興味もなかったトヨタ車体のブースにあった年表でした。そこには「10.19 トヨタ、日野の業務提携 コンテッサ絶命」とあるではないか!単なるミスかそれとも天下のトヨタからみれば日野コンテッサは小さな出来事か、そうではない、チャンと年表になっていますので重要なイベントと評価した訳でしょう。しかしここには以下の二つの問題が存在します:

その1:1966年10月19日とは何なんでしょう?おそらくミスと見ます。事実は10月15日に「トヨタ・日野自動車両社が業務提携発表」であり、その後の12月に「トヨタ・日野自動車両社業務提携調印」となる訳です。日本を代表する二社のイベントです。歴史を風化することなく正しく認識すべきです。(参照

20100525 hino viehcles w500

その2:絶命=絶滅(と理解し)は完全に種が無くなり地球上から消え去る訳ですが、ここの表の文面はおそらく当時のトヨタ自動車の意向をもって、あるいは当時の彼らの経営から現場に至るあるゆるところで共通認識としてそのようなことであったのだろうと推測するものです。しかし、それは一メーカーの意見であり、実際の大事なユーザーを抱えたメーカー(日野自動車)また日野車をリスペクト(尊敬の意、実は少量販売であった日野車はルノー4CV時代からのそんな個人ユーザーに支えられた)していた者にとっては、責任をしょわないマスコミ表現の如くの「絶命」と言う言葉は考えてなかったと思います。結果的に今日での旧車の残存率(対生産台数)ではおそらく低くない状況で元気に棲息しており(参照)、技術を持ったサプライヤー含めて乾いた雑巾をこれでもかとしぼるような利潤追求の商業的判断ではEOL(End of Life)となりましたが、現実には業務提携発表の1年後の1967年末時点でさえ、およそ9万台弱のコンテッサ(ルノー含む)が登録されていました。このトヨタ車体ブースの年表に反して、「利用=文化としてのコンテッサ」は絶命ではなく、その後、法的な部品の供給責務に沿って多くは1980年近く迄棲息し、その後も熱心な個人オーナーにより日常の足、また自動車趣味として「ちゃんと走るコンテッサ」を生活の一部として楽しませていただいております。

 最近のクルマは過度とも言える電子化が施されました。人間がクルマを操ると言う本来の感性だとかドライバーとクルマ&路面とのナチュラルな対話とかに影響するところまでクルマ自身がドライバーの意思や本能に反したような制御を短絡的な安全とか見せかけだけの快適性だけでギミックのように盛り込まれているようです。結果的にそれらテクノロジーによる様々なトラブルも発生しております。クルマ本来のドライビングの楽しみなど含めて歴史感をもって徐々に革新性を盛り込んでいる欧州車を見れば方向性が真逆のようにも見えます。これら発生している諸問題はある意味ではクルマの制御を電子&ソフトウェアに任せてしまったと言うことへの神からのメッセージと思うもので、人間の驕りに対する神の戒めと考えます。「コンテッサ絶命」と言わせてしまうこと自体が同様に覇者=強者の驕り (トヨタ自動車 75年史 第2節 モータリゼーションと貿易・資本の自由化 第4項 日野自動車との提携とも昨今でのグローバル市場での製品課題にも通じるものと感じた一場面でありました。

(SE Original:2010.5.21)


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