コンテッサ1300のシャシーは基本的には、工業製品、あるいは商品としてちゃんと設計されたものであることは間違いありません。しかし、それは50年以上も前に設計されたものであり、さらにそれを大きく改善する間もなくあっさりと市場から消えたクルマなのです。
日野自動車がルノー4CVは日本で展開した時代は、やはりフランス車の「足」を是としてものであり、当時の日野の技術を含む文化もそのようなものを理解したものだったと分析しています。ルノー社は,その後もRenault 4、さらにR8へと伝統の柔軟な「足」を発展させていました。一方、日野は当時の道路事情やタクシー需要などに対応するため、あるいは自社技術展開として、「足」に関して独自の発展をさせました。
コンテッサ900では、日野へのロイヤリティある4CVのユーザーからは、フランス車の良き「足」の味付けが薄れ、ドイツ車のようにも変化してしまったとの意見も聞かれました。しかし、日野は市場の差別化として後輪の硬さの結果としてのロール率が3.45度という少なさをアピールして行きました。そして満を持した日野コンテッサ1300では、特にクーぺはロール率が2.95度と驚異的な値を示すに至りました。もちろん、それは「日本」での販売活動に大いに利用されていました。
このロール率の低さのメリットは何があったのだろうかと言うものです。個人的な分析ではありますが、操縦性については、ある程度の速度までのアンダーを保つと言う意味合程度で、足が硬いだけの何ものでないと考えます。単なる、マーケィングの材料ではなかったのかと分析します。当時の試乗レポートでも、「ロール率を低くするためのリアサスの硬さは意味はない」とか、外国では、「アンダーとオーバーが同時に現れる不思議なクルマ」と評されていました。ただ多くの自動車雑誌ではあまりそのような辛口の意見は見当たらないのは、古今を問わず、日本のメディアとメーカーとのしがらみかも知れません。 (こちらも参考に:リバイバル・モータリング・ジャパン in 茂原)
さて、当時のコンテッサ1300のオーナーはどうしていたのだろうか?多くは、アンダーとオーバーとか、柔軟な足、多くはそんなことは問うものではなかった。しかし、少数ではあるが、もっと硬い足が欲しいとバネを切ったり、あるものが柔らかいのもをと、クーぺにセダンのスプリング(一巻きカットが良いと意見もあった)を入れたりしていた。
そこで、コンテツのリアの足のスプリング:バネ常数を分析してみました。計算式には、以下のものを用いました:
以下に、今迄、当サイトオーナーが実際に使ったスプリングのおおよそのバネ常数を目安として示します:
種類 | 線径 (mm) | 有効巻数 | バネ常数 |
---|---|---|---|
セダン用 | 15.67 | 8.5 | 7.27 |
セダン用一巻きカット | 15.67 | 7.5 | 8.24 |
クーペ用 | 15.8 | 8 | 8.00 |
スポーツキット | 15.8 | 6 | 10.67 |
クーペ改:BRE(1) | 15.8 | 6 | 10.67 |
クーペ改:BRE(2) | 15.8 | 5.75 | 11.14 |
クーペ改:BRE(3) | 15.8 | 5.5 | 11.64 |
スープラ F 流用 RS製 (1) | 14.8 | 7 | 5.82 |
スープラ F 流用 RS製 (2) | 14.8 | 4.75 | 8.57 |
オデッセイ RB1 F 流用1.25巻きカット | 13.8 | 6.25 | 5.79 |
オデッセイ RB1 R 流用 | 14.4 | 6 | 7.92 |
セダン用の一巻きカットは以外と硬く、クーペ程度になってしまうことが解ります。やはり、スポーツキットはかなり硬いことが明らかです。スープラのものはかなり柔らかい、事実そうであり、これも良しです。ただ、柔らかい故に注意しないと車高が少し下がり過ぎることであります。最近、試したオデッセイのリアは、無改造で装着、セダン用よりやや固く、クーペの固さに近いし、キャンバーは適正であります。フロント用は1.25巻きカット、セダンより少し柔らで乗ったフィーリングはこれは良いのではないかと感じましたが、柔らかで短い故、当然であるが車高が若干下がり、キャンバーが付きやすいです。おそらくカットをもう少し控えめにすれば良いでしょう。その場合、更に柔になると思われるが試す価値は大いにありと思います。
以下に、実際のスプリングの様子を示す:
クーぺ用、スポーツキット、スープラ F 流用 RS製 (2) 2本、クーペ改:BRE(2)
左から、クーぺ用、スポーツキット、スープラ F 流用 RS製 (2) 2本、そしてクーペ改:BRE(2)です。スープラ (ソアラと同じ) 含めてモダンカーのスプリングは選択肢が広く、プログレッシブタイプも選択出来ます。註:BRE(2)は単なるカットではなく、丈を伸ばしている。
クーぺ用とスープラ RS の比較
クーぺ (下) とスープラ RS (上) の比較。スープラは下部のシート面、半周カット。
クーぺとスープラ のプログレッシプタイプ
クーぺ (下) とスープラ (上) のプログレッシプタイプ (メーカーは忘れた) の比較。スープラは下部のシート面、同様に半周カット。
RB1 R とスープラのプの比較
RB1 R (下) とスープラ (上) のプの比較。スープラは下部のシート面、同様に半周カット。RB1は加工不要。
セダン用、RB1のリア、RB1のフロント
上から、セダン用、RB1のリア、RB1のフロントを1.25巻きカット(この後、下の座面のあたりがきついので若干、フラットに削る)。
以下に、実際に取り付いた状態を紹介しましょう:
純正スポーツキット使用
スポーツキットを使用。2~3度程度のネガティブキャンバーとなります。(1986年3月)
スープラのフロント用のローダウンを使用
スープラのフロント用のローダウンを使用 (シート面のところを半巻き程度をカット。2~3度程度のネガティブキャンバーとなります。結構,柔らかいが丁度良い程度でもある。ショックはガスを使用。(1996年12月)
RB1のリアをカットなしで使用
RB1のリアをカットなしで使用、キャンバーは0.7~0.8と言ったベストな状態です。確かにスープラよりは硬い、でもクーぺのもの程硬くないです。長期に試してみたいと感じました。尚、ショックは、旧いコニのいすゞ・ジェミニのフロント用 (2275) スペシャルDからアルファの新しいコニ・スポーツのスペシャルD (1551) に入れ換えてみました。伸び側の調整は50%にしました。もう少し締め込んでも良いかもしれません。(2012年9月)
スープラ (RS) のものをカット
これはスープラ (RS) のものをカットし、ローダウンの足回りに入れたものです。目下 (2002年当時) のプロジェクトであり、ポルシェ911のように前後ともにキャンバーゼロを目指してました。しかし、実際は走ってからの調整であり、リアは少々の適切なるキャンバーが望ましいと考えます。また、ある程度は走り込まないと車高は落ち着いて来ないことを記しておきます。
なお、Tipsとして、以下の点を紹介して置きます。競技車両には無用ですが、街乗りもしなければならないコンテッサには、静音処理をしたい、そこで、スプリング組付の際に、以下のようのシートを加工して入れています。ホームセンターで買える天然ゴムシートです。厚さは約4〜5ミリ、スプリングの下側の本来のシートと皿の間に,上側は写真のように、金属製のシートにインサートします。
効果は絶大でありとだけここに書いておきます。また、微妙な車高調整にも応用できます。ただのゴムなので結構つぶれます。
最後に、秘密兵器を紹介しましょう。何時でも何処でもコンテツに合うスプリングをチェックするスケールです。これを持って街のアクセサリーショップで目当てものを探すのす。長さとバネレートについては、「裏書のある勘」です。もう四半世紀以上、こんなことを繰り返しています。
参考文献
- 日野コンテッサ1300クーペ整備解説書(CONTESS1300 COUPE)、昭和39年12月1日
- コンテッサ1300 整備説明書 昭和39年9月1日
- ドライバー、1964年11月号、国産車試乗リポート、コンテッサ1300
- L'AUTOMOBILE、ESSAYEE POUR VOUS、LA HINO contessa 1300、I'essai de J.-P. Thevent、Mai 1966
- 自動車工学、樋口 健治 著、朝倉書店 (1980)
(SE, Original 2012.9.16)
(Revised 2014.1.13)
(Revised 2019.3.28)
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