トランスミッション&ディフアレンシャルのリヤアクスル・ブーツ


 日野コンテッサ1300のリヤアクスルは、ルノー日野 4CVをベースにしたスイングアクスルです。そのジョイント部分は頑丈なケースにカバーされています。日野コンテッサ900以来、その設計は変らずとても大きなブーツに覆われています。ブーツ自体も日野コンテッサ900と形状は異なるがサイズ的には共通しています。

 このスイングアクスルは、現代のFF車のCVジョイントブーツで云えば,アウターのような4方向の動きはなく、丁度、インナーのような上下だけの2方向の動きだけです。現代のFF車のブーツはアウターでも10年前後、あるいはそれ以上の耐久があるようです。インナーに至ってはクルマの寿命以上のもの様で一般にはアフターマーケットの部品のリストにも見当たりません。

 そんなインナー程度の動きの日野コンテッサではあるものの、品質は1960年代の日本の工業製品であります。当時でも日野純正は数年も使えば、多くは動きのシビアな下側にヒビ割れが入り,しまいには亀裂となります。当然、車検では交換、あるいは軽微の破れならならば下から見えないように上側にして見えないにするとか、はたまたシリコン系の接着剤で修理をするとか、丁寧な方法は包帯をしてその上にシリコンと結構、涙ぐましい苦労をしていました。

 それでも、日野純正のブーツは、後の日野コンテッサクラブ製のブーツ (すなわち、非工業製品) よりは格段の耐久性であることは間違いありません。しかし、誰でもが当時の日野純正をストックして訳ではありません。耐久性の低い非工業製品などのブーツは深刻な課題となっていました。なにせ、あるオーナーに弁によれば、交換の工賃が10万円の見積りとか、車検時の結構な出費となっていたようです。

 2008年当時、ある日野コンテッサ・オーナーの問合せで、当サイトオーナーとして何か使えるものはないかと本気で探してみました。例によって、フォーム・フィット・ファンクションの精神で、径が合いそうなものを探して見ました。まずは径が大きそうな米車の4輪駆動のフロントのアウターを手がかりにあたってみました。日野コンテッサのサイズのプラス・マイナス数ミリ程度で結構、数があることが判明したのです。

 そこで米国出張の機会に、米国のどこの街にもあるNAPAに立寄り、現物を見せてもらい、NAPA品番の「686-2207」と手にしました。規格的には、以下のようでありました:

Part Number: CVB 6862207

  • Product Line: NAPA CV Boots
  • Attributes:# CV Boot Bellows : (5) Bellows
  • Boot Length : 5.725"
  • Contents : (1) Boot, (1) Bag Of Grease, (2) Clamps, Snap Rings (Where Required)
  • CV Joint Boot I.D. of Both Ends : 1.205" Axle I.D., 4.35" CV Joint I.D.
  • Manufacturer : EMPI, Inc.
  • Manufacturer Part Number : 86-2207-D
  • Warranty:12 Months or 12,000 Miles Whichever Occurs First
  • Boots Prctices c

 実は、結果的にこのサイズのものは、日本製にトヨタ・ランドクルーザーに使えるものであることが判明しました。いずれにせよ、現物合わせのために、「686-2207」を2ヶ (材質が異なる、おそらく製造元も異なる、この辺が米国のおおらかさである。使えればよいのである、仔細なことは不要) 買い求めました。以下の写真は、NAPAの686-2207 (左) と日野純正 (右) の比較である。肝心の径はホンの1~2ミリ多きいだけであり、問題なさそうだと判断した。

20090205 R Boots 01,jpg


 さて、このベストマッチのNAPAの686-2207が日本車と解ったら、少し欲が出て来ました。それは取付の偉大なる省力化のための分割式です。そこで日本の旧車オーナーの味方、「MonotaRO」と訪問した。トヨタ・ランドクルーザーMiyako M-564G があることは容易に判明しました。すぐに注文をし、リアルタイムに日野コンテッサに使えそうな分割式を手にすることが出来ました。以下の写真は、日野純正、NAPAの686-2207 (材質の異なる二種) 、そしてミヤコの分割式 (商品名:Mタッチブーツ) の比較です。尚、当時の3年前の価格は殆ど割引が無く定価に近かったです。おそらくこの製品の初期の販売だったのではないかと推測します。今は結構な安価に入手出来ると思います。ただ、その当時の秋口は結構長い時間欠品となっていました。注意として、このランドクルーザー (ハイラックスも同じ) 用は分割ブーツは、どうもミヤコ製品しかないようです。

20110924 R Boots 02


 因みに、ミヤコの仕様は:

  • ミヤコ自動車工業 (Miyaco) Mタッチブーツ / M-564G (参照:モノタロウ)
  • セット内容: ブーツ×1、バンド×2、グリス×1 
  • 長さ(mm): 110.7 小径(Φmm): 31.8 大径(Φmm): 106.1
  • メーカー: トヨタ パーツNo.: 04427-60040
  • バンド刻印(大径): 4490 バンド刻印(小径): 1905 シスナーNo.: 1523

 さて、実際の取り付けはどうだろうか?まずは溝のはめ合いは形状は異なるがなんとかロックは出来そうです。

20110923 R Boots 03


 次に、径であるが、大きめであるのは承知であるが、以下のようである。オーケーとします。

20110923 R Boots 04


取り付け方法:少々マジックが必要!

 下記の写真のようなカットし、ワイヤーを通します。この方法に至るまで、実は週末の午前中、数時間の試行錯誤を要しました。中々ロック出来ない、手が入らない、諸々、難題をいただきました。もっとよい方法があるかもしれませんが、これは苦肉の策というものです。

20110924 R Boots 05


 カバーの中間の隙間でブーツをロックし、ワイヤーで外れないようにロックし、それを勢いて外側のシャフトに引っ張り上げる、後は完全に密着してしまいます。

20110924 R Boots 06


 そして、内側と外側をバンドでロックして終わり。内側はミヤコの附属のものをそのまま使いました。本当は数ミリ,短くした方がしっかりとロック出来そうです。外側は日野のオリジナルを利用しました。因みに分割部分の方向ですが、大事をとって、一番動きのすくなそうは横方向としました。

20110924 R Boots 07


 これで完成です。一つ目は試行錯誤で数時間を要しました。二つ目にコツを覚えたので、取付自身は5分程度で完了!勿論、その前に旧いブーツを外し、そしてクリーンアップ&チェックと、全工数では、およそ30分程度が標準作業時間と云うことになるでしょう。これはサスペンションやホーシングから分解&組立をしなければならない,実にウンザリとする作業を考えてと誠に偉大なる発見であり、「ミヤコ Mタッチブーツ / M-564G」さまさまであります。時代の進化とは本当にありがたいものです。

 以下は、日野純正ブーツを今回使用ブーツの比較を断面図で表したものです。赤線がここで紹介したトヨタのものです。当然、形状は異なります。しかし、機能は必要にして充分でしょう。ここでも、フォーム・フィット・ファンクションの考え方は達成されたと思います。

20110924 R Boots 08


 最後におよそ8ヶ月 (当時) を経た結果を、ここで公開のために念のために目視して見ました。下記のように素人目ではあるが問題なさそうです。ブーツだけが妙に奇麗に見えるのはなんとも滑稽であります。

20120513 R Boots 09


【重要注意:2013.1.19】

 分割式のブーツは交換が簡単なのが、大きなメリットです。しかし、それは現代のクルマのみに言えることです。コンテッサの場合は、幾つか、気をつけなばならないことがあります。

 例えば、デファレンシャルギヤのスフェルカル・ベアリングのOリングです。何十年も交換しない、あるいはどうなっているかわからないクルマは要注意です。すり減っている場合もあるし、切断していることもあります。

 そのような疑念に関わらず、一度は開けてチェックすることを強く薦めます。通常のコンテッサのブーツ交換であれば、構造上、嫌でもこの部分をチェックすることになることを忘れてはなりません。これはある意味でフェールセーフな考えでもあります。

 さらに、ユニバーサル・ジョイントの状態やグリスの入れ替え、そしてオイルシールの状態など予防的なメンテナンスも忘れてはいけません。要は、便利な現代の部品を使う場合でも、コンテツは50年前の旧いクルマであることを考慮してメンテナンスしなければならないということです。

 結果的に、良い意味で全体がそのようなことを面倒見なければならない設計、あるいは構造になっていることです。部品には、明らかな意志があり、それを正しく理解し、尊重し、敬意することが求められます

20190501 DIIFF P194




ご注意

 本記事の部品の使用について、コンテッサの愛好家クラブの中で使用禁止の通達が告知されました (2011年6月当時) 。整備のプロの方からのご指摘です。この部品の使用は重大事故に結びつくというものです。理由は専用に作られてない部品の使用は、いずれ隙間からゴミが入り、内部のジョイントを痛め、最終的には破壊に結びつというもののようです。

 愛好家クラブの皆さんは利用にはくれぐれもご注意ください。

 当サイトオーナーは、その使用禁止通達はメンタルな問題であり、この部品の使用は物理的に何の問題もないと信じます。


SE, Original 2012.2.25
Revised 2016.2.11
Revised 2019.5.2
Added 2020.12.18

20180612 Notice
  • 本サイトのデータ、すなわち代替品/使用可能品例 (プロセスも含む) は、当サイト・オーナー、また情報提供いただいた個人の見識です。それはフォーム・フィット・ファンクション (Form, fit and function) というレベルのメンテナンスに於ける互換性を意味するものです。実際の使用にあたっては,個人差が当然あります。それを理解した上でご参照・利用下さい。代替品/使用可能品例については、情報提供は歓迎するものです。こちらからお願いいたします(実名表記にて)。
  • 本サイトの知恵集(Tips)に記述してある内容は、あくまで日野コンテッサに関するアマチュアの経験です。自分の手を汚して自ら自身のコンテッサをメンテナンスするアマチュアのみがご参考下さい。他人に自身のコンテッサを委ねておられる方、あるいはプロフェショナルの方は、決して参考になりません。これについてご意見のある方はこちらまで(実名表記にて)

Back to トランスミッション トップ


本ページへのコメント&意見はこちら迄 (実名表記にて) 。
Any Comments to here would be appreciated (Please Use your one name)

全ての内容は、固有に記載のあるものを除き所有権は当サイトオーナー、江澤 智に帰属します。如何なる形式での再利用、複製、また再配布はくれぐれもご注意ください。
All contents, unless otherwise stated are copyright Satoshi Ezawa. So not reuse, redistribute, or duplicate in in any format or way. All pages are not sponsored or endorsed by Hino Motors, Ltd.
全てのページは日野自動車のスポンサーあるいは裏書きのあるものでありません。

© 2004-2018 HinoSamuri.org  - ヒノ・サムライ研