自分が何十年のやって疑問に思うことが当時の雑誌の記事を拝見すると、なるほどと思うことが多々あります。
画像のモーターマガジン誌、1966年 (昭和41年) 3月号もその一つです。数ヶ月間、書棚からピックアップし、就寝前、ベッドの中で開くと実に興味深い記事がありました。
6ページに及ぶ記事、「コンテッサ1300Sのロードインプレッション」 (和田垣 雄三氏執筆) がそれです。丁度、1965 年 (昭和40年) 12月の新発売になったコンテッサ 1300Sについて取り上げた記事です。
氏の記事は実に質実剛健と言えるもので昨今の自動車雑誌のカタログ的な内容ではなく、実に率直にインプレッションが書かれています
その中でもっとも印象的なのが以下のテキストです:
「以上がコンテッサ1300Sのエンジンの特長を主とした概要であるが、実際に各種の状況下での走行状態は、かなり 安定したすぐれた性能を示した。と言ってよい。単純にエ ンジン性能だけから推測するのは軽率であるが、第三京浜での最高速テストには、軽く148km/hをマーク, まだ出力には余裕のある気配を示した。この出力は、急登坂、発進 加速の面でも、一貫した力強い特性を示し、伯爵夫人のス タミナは今や全盛期か、と思わせるものがあった。
ただし、高速時に於ける高性能に比べて、エンジンの低回転時におけるトルクの少なさは、どうにも否定できないようだ。あらゆるスピード・レンジにおける、フレキシブル なエンジンなる謳い文句には、やや異論がありそう。具体的な徴候として、 停止からの発進時に、ごく静かなスター トを試みた場合、クラッチの合せが適切であるにかかわらず、エンストを越したことが再三と, 3速 2速とも、著しく低回転接近につれて、エンジンのノック症状が早く始まるような印象をうけた。一方エンジンの出力要求反応は発進、追越とも鋭い加速性を有し、レスポンスに優れる。 高出力・高速回転への設計意図は、よく生かされているといえそうだ。」
自分の興味は、太字の部分です…低速トルクの問題です。現代の多く、あるいはほとんどのコンテッサ のユーザーや旧車の記事などではそのような表現はなく、むしろ低速トルクが大きいということです。しかし、自分自身ではこの記事に同意するもので、やはりそうだったのかです。
この問題は、日野自動車はある時期にエンジン特性を変えるためにふらいホイールを実に重いものに変更しました (参照 - 知恵集:フライホイール) 。日野自動車のその変更理由は明確ではなかったのですが、おそらく、市場の意見がこの記事にあるようなもので、なるほど、それを反映した、と理解しました。この1300S発売直後、全面的に変更されたを分析するものです。
日野コンテッサ1300、初期の個体は、低速トルクはなかったが、実は軽快感のあるスポーティかーだったのでしょう。それが設計本来の目論見だったと、しかし、市場の意見、あるいはコンテッサ1300ユーザーの意見はそうではなかったと、ちょっと、残念な気がします。
そういえば、80年代前後のコンテッサクラブに在籍していた時代、トルクが無いなど理由で、わざわざ重いフライホイールに切り替えたオーナーは一人や二人ではなかったことを思い出しております。50数年前の日野コンテッサ 1300本来の軽快感を味わいたいと思う方は、鋭意、考慮すべき事項と考えます。