本シリーズ、考えてみれば年初めの1月以来です。齢をとると時間の管理が悪いようです。
ここで “絶対指標” としてのエンジン出力のみで加速力を中心にクルマの性能を診てみたいと、具体的には、”パワーウェイトレシオ” です。それをベースにビ筑などジムカーナの “戦闘力” を考察してみましょう。
この課題は自車すなわちコンテッサを何馬力にすれば、例えば、ビ筑での他車に比べて加速力がどうなのかです。相対関係を診るために末尾のような表を作ってみました。
表の各ラインの背景色の黄色が自車を示します。そして想定するパワーを得られるとどの辺のポジションになるのかを診てみました。
背景の色無しがビ筑でみるクルマたちです。また薄緑はビ筑には未だ登場してないが個人的に気に入ってる旧いクルマたちの例です。尚、ビ筑のクルマには軽自動車は除外しました。理由は、メーカー公表のパワーは一律64hpであり、これは個人的な見解としてここでは参考にはならないと考えるためです。
自車の車重を860kgとしました。標準車両 (表の一般市販車:Delux & 一般市販車:Standard車 (実際には市場に出なかった) の所謂カタログ値) から走行に不要なもの全てを取り去ったり、アクリルに材質変更したりでFIA公認重量は830kg、そこにロールバーを入れたり、オイルクーラーやサブラジエータ&ヒーターを入れたりと30kg加えて860kg程度と推測しました。実際はもうちょっと重いかもしれません。
さて我がコンテッサはどんなにがんばって、すなわち本題であるカムプロファイルを検討して多少なりともパワーを得てもせいぜい85hpが現実的な数字、一応入れたみたものの90hpは非現実的と考えます。でも80hp程度になればホンダS600などに対して少し戦闘力がありそう、だが1600cc以上のクルマにはまったく歯が立たないのはこの表から明白です。ウ〜ン、これでは夢も希望もありません。まずはとにもかくにも大きな馬力、軽い個体に加速力あり、すなわち “戦闘力” ありです。
全体を見ると、現代のスポーツカーに比べて倍近くも劣るパワーウェイトレシオです。また年代に関係なくスーパースポーツたちに比較して3倍ちかくも差があります。実に絶望的な感じであり、考えるだけでパニックになります。
さらにパワーウェイトレシオについて実際に走る性能の検証をしてみましょう。今ではあまり使われてませんが加速力の指標となるSS1/4、つまり0-400mのタイムを検証すると明らかです。
当時のデータをみると、表中の6.3のフェアレディ2000 (SR311) は、15.1秒とダントツです。7.8のホンダ 1300 クーペ 9も、16.9秒とコンテッサと同じ1300ccにしては例外的な性能です。9.8のルノーゴルデーニ R8 (1,255cc) は、17.5秒とこれまたすごい性能です。12.2のホンダ S600と12.9のトヨタ スポーツ800は、それぞれ18.7秒と18.8秒です。そして我がコンテッサは、14.5、19.8秒です。これら以下の表にまとめてみました。パワーウェイトレシオとSS1/4の時間の関係は明白であり、パワーウェイトレシオが小さいほど加速力が良いことで、表のように完全に比例しています。
以上のように、パワーウェイトレシオの小さいほど、加速力が大きいことを実際に走る数値をもって証明した訳です。なお、ここでの数値はあくまで一般市販車をベースにしたものです。オプションのクロスミッションなどは考慮に入れてません。また、ジムカーナなどの現場では、各車それなりにエンジンのチューンアップ/スープアップ、そして様々な軽量化、極端にはドライバーズシートだけのドンガラ車も珍しくはありませんので現実は違った数字にもなるでしょう。いずれにせよ、ここでの数字は公に公表されている一般標準車両の馬力&重量です。
まずはジムカーナでの戦闘能力を得る第一歩はパワーウェイトレシオであることが間違いなさそうです。
この検証は正しいと考えますが、実際の “戦闘力” はどうなのか?であり、サーキット、ヒルクライム、そしてジムカーナ、それらを考えればパワーウェイトレシオの “絶対指標” であるかは再考が必要と考えます。例えば、ジムカーナの場合、それに路面とちゃんと対話できる最適なシャシーの性能 (最近ではタイヤも大きなファクター) 、そして最大はドライバー本人の性能&能力 (クルマを壊さない/無理を掛けないも要素) が大きな要素になるでしょう。つまり自分が考えるには、パワーウェイトレシオ=20%、シャシーの運動性能=30%、そして最大はドライバーの技量=50%でしょうか!
スポーツカーでないスポーティカーである非力なコンテッサも20%の効果に寄与するパワーウェイトレシオ対策のパワーアップに向けた "カムファイルの悩み” でありました。(続く)
参照文献:
- 三栄書房 ROAD TEST DIGEST (1967.9)
- オートテクニック (1969.12)