日野コンテッサ1300のGR100はウエットライナーです。当時の日野の技術で1-2番、3-4番の間には1ミリ弱の間隙を設けて水の流れを作ったそうです。もちろん冷却のためであります。
右の画像のようにライナーを合わせるとその隙間が明らかに目視することが出来ます。これを設計した当時の日野の技術者はこの狭いスリットのような間隙を何時も自慢されておりました。おそらく日野自動車が初めて設計した小型ガソリンエンジンなのでそれなりの思いやりがあったのだろうと思う場面でした。
そして右の画像のあるのがそのスリットが存在しないシリンダーライナーです。
このライナーは私が1976年に入手したBRE製のクーペ “L” に入っていたものです。
何時の時点にこのスペシャルなライナーが入ったかは定かではありません。
前オーナーによると、このオリジナルの設計を変えたスリット無しの厚いライナーの目的は、ボアアップしたライナーの剛性を上げるためだったと聞いております。
それは正に正論です。スポーツキットの72.2ミリ程度ならそんなに剛性を気にする必要はないでしょう。しかし、それがワークスに供給した74ミリならそれなりの考慮があったのではないかと推測するものです。
当時からボアアップしたライナーはフニャフニャになって踊っているかも知れないと我々仲間内で議論していました。やはり、競技に取り組んでおられる方はちゃんと対策をしていたのだと思います。私はこの厚みのあるスリット無しのライナーで何年も日常使用しましたが冷却に何ら問題を感じませんでした。と、言うことは日野の技術者の思い入れは技術上のよかれだったのかとも結果的にそうかも知れません。
以下に参考までに形状の画像を示します。左がスペシャルの大きなボアアップしたものです。右は標準品のライナー (画像はスポーツキット) です。見ての通り、ボアアップのライナーはフラットな構造で組み付けた際に厚みによりスリットは無くなります。問題はライナーの下部がわかりやすのですが、一番下のようにそこがカミソリ状態になってしまうことからもライナーの厚みが明らかなリスクであることは間違いありません。
追記:上記の1-2番、3-4番の間の間隙、当時の高性能エンジンであった日産 SR311 2Lエンジンの断面図をみるとありません。つまり、そこには冷却水を流してなかったようです。と、いうことは無くてもよいのではと考えます。日野の技術者は卓上の設計のこだわりを現場の実務より優先したのではないかと推測します。でもそのスピリットを否定するものではありません。 (2019.11.20)
参考文献:DATSUN COMPETITION PREPARATION MANUAL by BOB SHARP RACING with NISSAN MOTOR CORP. IN U.S.A.