画像の左のピストンは日野品番:7109125310のYE28用、右は日野品番:7106120730、共に高回転向け競技向けエンジンに製作された74mmの径、所謂74ピストンです。
左のものはオイルリングがありません。当時の日野の設計&試験に関する書物を読むと、そこにはちゃんとピストンの下部ではありますがオイルリングが存在します。それはどの過程で省かれたかは分析できていません。少なくとも米国のオーナーがチューンナップした結果のYE28エンジンのピストンにはオイルリングが存在しません。またスペアパーツにもありません。
オーナーの証言によると、オイルリングは使用しなかったこと、高回転向けの薄い二つのコンプレッションリングだけを使用したとのことです。さらにそのオイルリングにはアルファロメオのものを使用、そのために大量のオイルリングをストックしていました。また、取付方法や使用オイルにもノウハウがあったようです。
以上の話がミステリーではありません。ミステリーは画像の右の74mmピストンのコンプレッションリングとオイルリングです。リングのサイズをチェックすると米国のオーナーが使ったアルファロメオのそれと同サイズです。これはいけるぞと思い、早速、イタリアからアルファロメオ1300のリングセットを購入してみました。
結果的にサイズ的には日野のそれとアルファロメオのそれは同じであり、フォーム・フィット・ファンクションとして使えると考えております。多くのノウハウがある断面形状については完全には分析できていませんが、今のところ、日野ワークスだけに提供されたOHV 74ピストンのエンジンが新品のリングを使ってOH (オーバーホール) できると期待しております。
しかし、1960年代の日野のエンジニアは何故、1950年代から市場に出ているアルファロメオ1300のTOHCエンジン (ボア:74mm X ストローク:74mm) のピストンと同じサイズであったのかが興味あるところです。