これはブレーキのマスターシリンダーの径、3/4 (俗に19ミリ) か 7/8 (俗に22ミリ) の議論です。旧車でこその課題です。現代のクルマには無縁なダイレクトに腰と脚力を目一杯使ってクルマを停止させると言うある意味で本当のスポーツカー (ドライバーの体力勝負の意味) の話です。
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実は自車:日野コンテッサ1300クーペには日野自動車が極限られた範囲に適用・実装したダンロップ製のキャリパー (対向型) が入っています。このキャリパーと同系統のものは当時、ホンダS800やマツダファミリアも採用しておりました。ただホンダS800はガーリング製であったりダンロップ製であったりしたようです。
まつどクラシックカーフェスティバル 2015で同じダンロップと言うこともあり、こ参加者のホンダSの方にお話を聞いてみました。その方は当サイトオーナー以上に3/4と7/8の違いを熟知・経験されておりました。ホンダSのオーナーの間でもその “好み” が分かれているそうです。簡単な表現をすれば、7/8は一発でガツンと効くと、3/4はまずジワーと軽く効きさらに深く踏んだその先でより強力に効くと言うような同じ感覚でもある自分の経験含めての「マスターシリンダーの径」談義となりました。
自車には日野の本来の設計値である7/8から3/4へと昨年変更を試みました。2013年公道復帰以来、米国Tilton社製の汎用マスター、74-Series をメンテナンス部品の入手容易性の日野に設計の欠点を改良するなど諸般のメリットで採用し、7/8径を実用に供しておりました。昨年の夏 (2015年当時) 、3/4のクラッチマスターと同径の方が部品共有が容易とブレーキマスターも3/4に入れ替えました。また、それは7/8とのフィーリングの違いも試してみたかったのです 。3/4のはストロークが長く曖昧な効き味、確かに長いことにより踏み味はマイルドになりますが、結果的にストロークは短いことで踏み味はやや重になりますが確実にローターを喰っている感覚、フィードバックがリアルタイムの7/8に戻しました。
これは 7/8に比べて3/4の方が効きが良いとなどの原理原則を理解しない間違った解釈の問題 (あるいは都市伝説?) ではなく、パスカルの原理の基づいた径によりストロークが異なることで効き味が異なることの議論です。同じダンロップと言うこともあり、これについてホンダSの方にお話を聞いた訳です。
マスターシリンダー自身はパスカルの原理で径の大きさに関わらず基本的にはブレーキを効かすエネルギーは同じですが、径が大きければ短いストローク、小さければ長いストロークになります。その辺の違いがつま先のコントロールのフィーリングの違いになり、それは個人の感性とか目的によって異なるということです。また、ブレーキ設計者の意図にもなると考えます。実に奥に深い話であります。
こんな話しとその検証が出来たことはこれまた大きな収穫でした。
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フォーム・フィット・ファンクションの考えに基づいて、
日野製マスターシリンダーからTilton製 74シリーズの汎用マスターに変える。
上がそれを使用した3/4 (クラッチ) 、下が7/8 (ブレーキ) 。
この74シリーズは見て分かる様に取り付けの方向性が二つ可能である。
コンテッサの取り付けでは横方向であるべきだが、シャシーに新たな穴を空けたくなかったので
ブラケットを作り取り付けの互換性のインターフェースとした。
Tilton製の最大の特徴はピストンを押すプッシュロッドの最大角度が小さいことである。
日野製のそれは短い故に急な角度となりおそらくピストンを押すことに無理ありと分析、
それはレーシングカー制作の教則本にある許容角度を大きく超えたものである。
これが日野製を使うことをやめた大きな理由の一つだった。
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参考までに実際の取付状況:左がブレーキの7/8、右がクラッチの3/4。
画像からは見えないがブラケットを止めてあるフレームの裏側に補強のプレートを入れてある。
ペダル機構の支持の2カ所、シリンダーブラケットの2カ所、計4カ所で固定している。
このTilton製のこのシリンダーは横止めも可能だがそれをあえてブラケットを製作した。
ブラケット、6片の各ピースの仮止めはMIG、本留めはろう付け。
それも素人細工、今のところ何もなし!