ドラムブレーキのホイールシリンダー (1) で、セダンのリヤ・ホイールシリンダー径の違いについて書きました。そこで当時の日野自動車の運輸省届出の「主ブレーキの前後輪のライニング寿命を均一化するため」が気になっていました。理由は「それは本当だった?別な理由があったのでは?」でありました。
表1の 当時のリアエンジン車のブレーキの前後配分比を見ると、明らかにコンテッサのそれはリアの制動力の配分が過大です。なぜでしょうか?設計者の証言がなければその真相は解りません。リヤの荷重が大きいからでしょうか?一般のRR車も重量配分は同じようなものだが、制動力配分はコンテッサだけが異常に異なります。
これから推測すると、その変更はおそらくリヤの制動力の過大、すなわち前輪に比べてロックし易いアンバランスがあったのではと考えました。その結果として、表2の コンテッサのブレーキの前後配分比の変更履歴にあるように、前輪に若干大きめの制動力を掛ける、すなわち前後共同じ径のシリンダーとなった、と思う次第です。これでより安全な走行を目指したと言うのが、真相と推測したい思います。
実は更に前後比を変えた「特別仕様車」と言うものが存在したのです。これは前輪ホイールシリンダー径を増大し、前輪の制動比を上げていたのです。この方がむしろ一般のRR車並みであります。しかし、実際これがどの程度装着されたのかボクは調べきってないし、実車も見た記憶がありません。でも本当はこれが正解ではないかと感じています。
と、言う分析ですが、皆さんどうでしょうか?コンテッサを更に正常進化させるために情報&意見を期待します。
尚、この調査をしてる際に気がついた点は、ルノーのRR車は1960年モデル以降、リヤ・シリンダーにプレッシャ・リミッティング・バルブ(最近の用語ではプロポーション・バルブか)を装着していることを勉強しました。これは急ブレーキ時の尻振りを防ぐ手段と推測します。日本車はおそらく1970年代になってからです。当時の日本車は自動車先進国の欧州車に対して10年ものブレーキの進化の差が当時あったのです。
参考資料:
- モーターファン、ロード テスト、1964年12月号
- モーターファン、ロード テスト、1964年8月号
- モーターファン、ロード テスト、1965年3月号
- モーターファン、ロード テストダイジェスト、1967年度版
- モーターファン、ロード テストダイジェスト、1971年度版
- モーターファン、ロード テストダイジェスト、1972年度版
- GLENN’s Renault REPAIR AND TUNE-UP GUIDE (1964)
【表1:当時のリアエンジン車のブレーキの前後配分比】
【表2:コンテッサのブレーキの前後配分比の変更履歴】
(SE, 2006.12.2 (オリジナル))
(SE, 2017.8.21 (改訂))
(Refined 2020.1.2)
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