2021.4.17:カム・プロファイルに悩む (その7) - A112 Abarth用にトライ

20210418 CAM Abarth  1100

 2月のカムプロファイルに悩む (その6) - ベストな戦略&戦術ありきで “結論"のブログで、トルクステアさんから頂いた命題、それはアウトビアンキ A112 用にハイスペックなカムをどんな性格のか、その際におそらく “完全に競技用" だろうと、ついてはコンテッサのGR100エンジンでシミュレーションと返事をしてました。

 そこでこの日になって、トライしてしました。

 カムプロファイルを除いたGR100もパラメタは次の通り:

  • ボア - 72.2mm (スポーツキットピストン使用、1.2mmオーザーサイズ)
  • ストローク - 79.0mm (所謂、1,293cc)
  • 吸入バルブ - 38.0mm (トヨタブリスカ用ヘッド使用)
  • 排気バルブ - 32.0mm
  • 圧縮比 9.0 (クーペ標準カム及びトヨタブリスカカム) その他は9.3 
  • 排気システム - ハイパフォーマンスタイプ (公道走行用)

 カムのプロファイル (IVO - IVC - EVO - EVC)

  • ①標準クーペ用:22 - 54 - 60 - 16
  • ②トヨタブリスカ用:16 - 60 - 60 - 16
  • ③スポーツキット用:25 - 67 - 67 - 25
  • ④A112 Hot Strret用:30 - 70 - 70 - 30
  • ⑤A112 Mild Race (1) 用:33 - 73 - 73 - 33
  • ⑥A112 Mild Race (2) 用:44 - 82 - 82 - 44
  • ⑦コンテッサ用 ENGLE 1100:29 - 64 - 67 - 26

 以下がシミュレーションの結果:出力&トルク

20210418 CAM Abarth Power
20210418 CAM Abarth Trque


 出力&トルク共にSAEのままなので、10〜15%くらい差っ引いて見る必要があります。

 結果を先に述べると残念ながら、A112用のそれらのカムはロングストロークの日野GR100エンジンでは効果をまったく果たせないことが分かりました。グラフの④⑤⑥がその性能を表します。かろうじて一番マイルドな "Hot Street" 用が6,500rpm以上が若干コンテッサ用を上回る程度です。

 ⑥A112 Mild Race (2) に至ってはまったく回らない、パワーの出ない、すなわち、トルクがない、スカスカの散々な結果です。とにかく、上には回りません!GR100が拒否してるかのようです。おそらくカムの持つトルクバンド域が高速域にあり、ロングストロークのGR100には追随できないと分析します。

 おそらくオーバラップの極端に大きなカムはロングストローク向きではないと推測します。これらのオーバーラップの大きカムはショートストロークでは性能を発揮するのではないかと、それもかなり上の回転域でと、例えば、7,000とか8,000rpmとか、結果的にうまくパワーがあったとしてもそれなりの扱いが出来るドライバー、そして相当なクロスレシオミッションを要求するのではないかと思います。

 ここで改めて学んだことは、コンテッサのGR100のようなロングストロークは280度ぐらいが限度かなと思うものです。それにしても②トヨタブリスカ用のカムはクーペのそれよりも上が若干良い様、下は似た様なもので普通に使うにはベストと感じました。トルクもあり、それなりに回る感じ

Engle LoGO

 最後に、オーバーラップの大きいカムではパワーアップ出来なかった悔しさ (?) で、奥の手で、1980年代にロサンゼルスのEngle社に作っていただいた⑦コンテッサ用 ENGLE 1100、これ結構良い数字が出てます。ただし、リフト量が12mm超え、そしてここでは圧縮比:12.0でトライしたものです。しかし、Engle社のノウハウは凄いなとも感じました。

 以上ですが、Abarth社は、アルファロメオのエンジンを使わず、なぜFiatのエンジンを採用したかがより明確に見えてきました。これについては別途書きましょう。

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