コンテッサ1300のエキゾース・ノート(排気音)は独特なものである。好調なエンジンを持つエキゾースノートは乾いた音色、そしてクルマが軽そうにあるいは微笑みをもって走っているように感じ取れるイイものである。学生の頃、多くのコンテッサが未だ街を見られた。歩いていて、後ろから来るクルマの音を聞いてすぐにコンテッサがやって来ると解ったものだ。おそらくそれはボクだけではなく、当時のクルマ好きの若者あるいは子供達は目を手で覆うたりして、クルマの車種当て合戦なんかも日常の遊びの一つだった。
今迄、多くのコンテッサ1300のマフラーをお釈迦にしたが腐ったりしたものだからすぐクズにしたりしていた。しかし、大分、以前からチャンと分解して、一度、その軽やかな音色の構造をじっくりを見たいと考えていた。今回、そのチャンスと思い、昨年,袖ヶ浦の走行会でお釈迦になったマフラーがあったので試みた。
まず、センターからチョップを入れ、片側の外皮を取り除いた。これは内部構造である。このようにその中は巧妙に分割されている:
排気の流れを分析すると以下のようで、4つの部屋で消音が行われる。そして排気温度は,エキパイ直結のA室が最も高く、順にB、C、そしてDと低くなり、テールパイプへと掃き出される:
以下にその温度変化を検証するための可視化出来たものを示す。この特製のステンレス製のマフラーは日野オリジナルの構造を忠実に再現して製作したものである。装着後、3,000kmほど走行した結果である。A〜D室へと明確な焼け具合の変化を見ることが出来る。A室はエンジンからの高温の排気を直接受けるためステン独特のゴールドになっている。「焼け無し」とある部分は直接排気を受けない部分であり、焼けはまったくない。
そして、音響的なものを分析するために断面図を描いてみる:
技術的な消音メカニズムを分析してみると、A/C/D室は「高域フィルター型」、B室は「共鳴型」と診る:
さらに解析のための「高域フィルター型」と「共鳴型」を基にフィルター構造を描いてみると以下のようになろう。A/C/D室で高域周波数を低減し、B室である周波数を共振させているものと思われる:
当サイトオーナーの青春時代、遠くから走って来るコンテッサ1300独特の軽やかなエクゾーストの音色は今だ脳裏に焼き付いている。それはおそらくA/C/D室での高域周波数のカット、そしてB室での共振の効果であると分析する。心に残るコンテッサ1300のエクゾーストノートの「ハート」、ここにありである。このマフラーを設計した技術者はこんな風にコンテツのエクゾーストノートが一生ものになっていることを考えたことがあるだろうか?単なる図面と数値だけの設計でないフィーリングとかは大事なものである。
この先、マフラー用の解析・シュミレーションのソフトを使えば、コンテッサ1300のエキゾースト・ノートもコンピュータ上で可能となろう。おそらく、好みのサインドも可能と思う。
参考文献
- 自動車エンジンのチューニング・アップ、林田 洋一、山海堂(昭和46年6月15日)
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