コンテッサ1300は短命ながら実に数多くの設計変更あり
3年にも満たない日野コンテッサ1300にも様々な変化が以下のように見られます:
- その多くは、どの産業製品にも見られる予期せぬ初期の設計・製造上の不具合を改善する、
- また若干なりの市場のフィードバック (販売店やユーザーの意見) 、実は短期間故これが少ない、そして多くはコストダウン、すなわち部品の原価を低減させる、
- あるいは製造プロセスを改善、すなわち単純化や共通化など。
初期の車両には全体に統一感のない過剰な品質、またはその逆なものが見受けられます。当時、これはある意味で非常に好ましいと個人的には感じていました。しかし、時間が経るに従って、市場のフィードバックとしての品質の底上げ、あるいはその逆、すなわちコストダウンと言ったものが明らかに目に見えるものです。また、ある期間だけの不具合、すなわちロットの不良など、またさすが工業製品だけあって同じように同じ部分だけが劣化するなどこれまた興味深いものがあります。当時の日本の製造業の努力あるいは技術水準をかいま視るものです。
コンテッサ1300にとって初期型、後期型の議論はナンセンス!
最近の旧車ブームのマニアの間では、初期型とか後期型と分類するような表現がよく用いられます。日野コンテッサ1300も例外ではなく、旧車イベントで「初期型」「後期型」ありきでご意見・評価を見受けます。当サイトオーナーとしては、日野コンテッサ1300としてはそのような分類は出来ないと断言します。理由は簡単であります。クルマとしては3年未満の寿命であり、一般に言われる「初期型」「後期型」などのようなある時期を境にした明確な変化な無く、基本的に何も変わってないということです。冒頭に記述した、設計・製造の品質の問題、そしてコストダウンだけということです。マイナーチェンジなどよくあるデザイン上の魅力ある変化とか、運転・運動性能の向上などにはまだ手がついてなかったと分析します。
解り易く表現すれば、「生産中止まですべて初期型」というのが正しいでしょう。すなわち、日野コンテッサ1300は、生産中止に至まで購買意欲を引き出すような商品力に関する新たな提案というものは、残念ながら盛り込まれなかったのです。しかし、日野コンテッサ1300の名誉のためにあえて言えば、欧州でのデザイン・コンクールでの評価を受けて、サイド・オーナメントのデザインを変更したくらいだと考えます。これは明らかにブランド価値を高める明確な市場へのメッセージでありました。そして、重要なことは、「初期型」「後期型」ではなく、生産された時期でどのような変化があったかというです。整備もそれによって全く異なりますし、部品全体の整合性も大いに注意しなければなりません。また、そのようなことを理解し、保持してこそ、日野自動車の当時の努力含めて日野コンテッサのブランドや価値を評価すべきものです。
「初期型」、「後期型」、あるいは「最終型」などは、正に「a thunderstorm or a tempest in a teapot」、すなわち「コップの中の嵐」 (ささいなことで大騒ぎすること) と考えております。
シャシーナンバー (車台番号) ベースの変更履歴の概要
以下は、日野コンテッサ1300のシャシーナンバーをインデックスとした改善&改良のポイントです。
- PD100-501810以降のセダン
- 変更箇所:シリンダ・ヘッドガスケットの形状を一部変更
旧品番:2 005 1007 00 => 新品番:2 006 1201 01 (ヘッド周り - ガスケットを参照) - 目的:エンジンのアフターランニング防止のためと言われる。
- 部品出荷時期:級品消化後 (1965年6月頃)
- 参照:シリンダーヘッドガスケット
- 変更箇所:シリンダ・ヘッドガスケットの形状を一部変更
- PD100-504138以降のセダン
- 変更箇所:ステアリング・ラックおよびストッパ・ラバーの寸法を以下のように変更
ステアリング・ラック 全長 652.5mm -> 646.5mm
ストッパ・ラバー 厚さ 8.5mm -> 5mm - 目的:「トーイン調整要を増すため」とあるが、これは本質的に関係ないと分析する。ステアリング・ラックの全長がおよそ6mmとストッパ・ラバーの厚さがおよそ7mm (左右で)、計:13mmの減少は再大回転半径に大きく影響するために、何らかの理由でそれを修正、すなわち大きくすることあったのでは推測する。
- 部品出荷時期:1965年1月より
- 参照:ステアリング関係 - 基本データ (2)
- 変更箇所:ステアリング・ラックおよびストッパ・ラバーの寸法を以下のように変更
- PD100-509778以降のセダン
- 変更箇所:カムシャフトをクーペのもとの共通化
旧品番:2 005 1231 00 => 新品番:2 006 1201 00 (エンジン・カムシャフト・プロファイルを参照)
吸気弁閉、下死点後 旧 42度、新 48度に変更。その他変更なし、吸気弁閉時期を変えたことによって
低速回転時の吸入空気量が若干少なきなるので、圧縮圧力も変わるため自然着火が防止できる。 - 目的:エンジンのアフターランニング防止のためと言われる。しかし、品番などに疑問多く、真実は見えない!
- 変更箇所:カムシャフトをクーペのもとの共通化
- PD100-512216以降のセダン3速車 (コラム)
PD100-512317以降のセダン4速車 (フロア)- 変更箇所:冷却ファンのサイズの小型化と形状、並びに関連構成部品
- 目的:ファンの騒音問題
- 参照:基本事項 - 冷却ファン
- PD100-514111以降
PD300-100065以降- 変更箇所:リヤ・アクスル・チューブのバンプラバーの形状 (高さ)
- 目的:操縦性並びに乗り心地の改善
- 部品出荷時期:1965年8月より(旧品消化後)
- 参照:リアのバンプラバー - 実践編
- PD100-513583以降のセダン
PD300-100073以降のクーペ- 変更箇所:トランクルームのカバーのロックをスクリュー式からレバー式に変更
- 目的:真意は不明。おそらく操作の容易性と推測
- 参照:メンテナンス:トランクルーム・カバー・ロック
- PD100-515240以降のセダン
PD300-100105以降のクーペ- 変更箇所:ステアリング・ハウジングのブッシュを鉛青銅鋳物からボリウレタン・ラバーに変更
- 部品出荷時期:1965年7月から
- 目的:ステアリング系統のガタ音を防止するため
- 参照:ステアリング関係 - 基本データ (2)
- PD100-519238以降
- 変更箇所:セフティ・ベルト取付けブラケットに廃止
- 目的:コストダウン。背景は、セフティ・ベルトの使用率が低かった。上記のシャシーナンバー以降は、ベルト (7色あり) とのセットでオプショナル扱い。
- オプショナル部品出荷時期:1965年7月中旬
- 参照: 安全面(1)- セフェティ・ベルト
- PD100-519352以降 (セダン)
PD300-100289以降 (クーペ)- 変更箇所:バックライトのカバーの表面塗装の変更、「銀ナシ地メラミン焼付け塗装」から「銀色メタリック・ハンマートーン」に変更。
- 目的:美観向上とデーラーノートにあり。
- 参照:無し
- PD100-525460以降 (通常のセダンおよび セダンの “S” 全車)
PD300-100851以降 (クーペ)- 変更箇所:ヒーターのパイピングの小径化、上記の車台番号以前は、25mmであったものを20mmとした。
- 目的:調査中。推測するに流速を速くしたかったのではないかと、後部から全部にあるヒーターコアまでかなりの距離がり、しかもヒーターコアは最上部にあり、効率的に暖めるには結構難儀な課題があったと考えている。
- 参照:無し
- PD100-526126以降
- 変更箇所: スタンダード車の前照灯の四灯化
- 目的:二灯需要の減少。背景には生産工程(すなわち、四灯への切換え注文)の簡素化との折り合いもあったと推測する。当時は価格の安いスタンダード車にでデラックス車の装備をオプションにように注文することが出来た。ラジオやヒーターなど内装品に比べ、二灯/四灯はボデー形状が異なるので生産工程&コストにインパクトが大きいし、多くがスタンダード車であっても四灯を求めていたことによるものと考える。
- 参照:無し
- PD300-101005以降
- 変更個所:PD300-101004までのエンジンルーム内吸気方式に変えて、密封型のエアクリーナにしてフロントに吸気口を設けた。
- 目的:日野自動車の説明はダストの侵入を低減させること及びそれによりエアクリーナの交換時期を延長するとしている。おそらくそれに加えてエンジンルーム内の温度上昇の問題も防いだものと推測する。
- 参照:SUキャブレター - 基本データ
- PD100-526180以降
PD300-101039以降- 変更個所:バッテリーケージの形状変更、セット (クランプ、マット、リテイナーアッシー、ケーブルなど) で互換性あり
- 目的:バッテリー容量、40A/hから35A/hに変更
- 参照:無し
- 変更個所:バッテリーケージの形状変更、セット (クランプ、マット、リテイナーアッシー、ケーブルなど) で互換性あり
- PD100-527499以降
PD300-101194以降- 変更個所:エンジン、フライホイールアッシの形状変更
- 目的:データがないが、回転のなめらかさとトルク感向上のためと推測する。
- 参照:フライホイール
- PD100-532848以降
- 変更個所:セダンのノーマル車(DXの4速)とスポーツ(S)のトランスミッションの共通化
- 目的:DXの4速車の2速を2.31から2.12に高め、スポーツの4速を0.97から1.04に下げ、共通化を図った。名目上は、スポーツの最高速を落とすことなく、トップの加速性能を上げるとある。実際は、生産工程の簡素化があったと推測する。ただし、1.04のトップを持つスポーツは、0.97のそれよりは最高速は伸びた。理由は、0.97ではギヤが高すぎるために頭打ちになったのだ。クーペも同様に、1.04のミッションの方が加速も良いし、最高速は容易に伸びた。
- 部品出荷時期:1966年7月初旬より
- 参照:トランスミッション&ディフアレンシャルの種類&オプションとギア比
- PD100-533501以降
PD300-102020以降- 変更箇所:ミケロッティ・マークを亜鉛ダイキャスト製からプラスティック製に変更
- 目的:外観向上および重量軽減とある。その通りと思う。さらに、コスト低減が大きいと推測する。亜鉛ダイキャスト製は腐食でボチボチが発生し易い、この辺が外観向上を意味するのか?しかし、プラスティック製は破損し易いし、今となっては修復が困難。
- 参照:無し
- PD100-533515以降
- 変更箇所:室内騒音の減少(特に後席)のために、バックパネルに、ダンパーを装着する。
- 目的:パネルの共振を低下させる。ただし、クーペには対応せず。クーペは前席優先という考え方だったのだろう。
- 参照:メンテナンス - 防振対策関連
- PD100-539212以降
PD300-102068以降- 変更箇所:バックアップ・ランプのブラケットを廃止
- 目的:“美観を向上させる”となっているが、今となっては、ブラケットがあった方が上品に見えると思う。要は、当時、コストダウンと生産工程の問題だけだったのだろうと推測する。
- 参照:(調整法含め、執筆予定)
- PD100-533531以降
PD300-102069以降- 変更箇所:マフラーのテールパイプの形状と掃き出し方向
- 目的:簡素化によりコストダウンi。(日野のデーラーノートにある)「排気音の音質の改善」は二次的なものか。結果的にこの改善は、テールパイプは短時間に根元からも折れてしまうことにもなってしまった。
- 参照:マフラー - テールパイプ
- PD100-534120 以降
PD100-534107 (S) 以降
PD300-102127以降- 変更箇所:クランクシャフトを鋳造から鍛造に変更
- 目的:内製から購入品によるコストダウン
- 参照:クランクシャフト
- PD300-102257以降
- 変更箇所:ディスク・ブレーキのキャリパー
- 目的:鳴き問題。強度アップ (剛性) 、これは結果的にフィーリングが格段に改善
- 参照:クープ用ディスクブレーキ - 実践編
- PD100-535990以降
PD300については不明- 変更箇所:ステアリング・ラックの右側のブッシュの材質を鉛青銅鋳物からクロム・モリブデン鋼 (SCM21) に変更
- 部品出荷時期:1966年9月中旬より
- 目的:耐摩耗性の向上
- 参照:ステアリング関係 - 基本データ (2)
- PD100-536082 (3M) 以降
PD100-536462 (4M) 以降
PD100-536218 (S) 以降
PD300-102455以降- 変更箇所:オイルパン・ドレイン・プラグのドレーン・シート部にスペーサ追加
- 目的:プラグ締付け時の変形により油洩れ発生を防止する
- 参照: オイル周り - ドレインプラグ - 基本データ
- PD300-102539以降
- 変更箇所:セフティ・ベルトを二点式に変更
- 目的:ロックのないフルリクライニング機構、また汎用品使用によるコスト・ダウンを思われる。
- 参照: 安全面(1)- セフェティ・ベルト
- PD100-536528 (3M) 以降
PD100-536615 (4M) 以降
PD100-536585 (S) 以降
PD300-102542以降- 変更箇所:オイルフィラークキャップ下面に穴あけをし通気口を設ける&シリンダーヘッドカバー内部にバッフル・プレートと増設
- 目的:ロッカーチャンバーのブリーザ効果&オイル吹き出し防止
- 参照:ヘッド周り - オイルフィラー&カバー
- PD100-536406 (3M) 以降
PD100-536654 (4M) 以降
PD100-536585 (S) 以降
PD300-102562以降- 変更箇所:トランスミッションのケースの材質をアルミから鋳鉄に変更
- 目的:防音効果を向上させるため。これは大義名分と推測。本来ならば、ケースの形状を解析するなりして、本質的解決のために最適な形状にすべきものだろう。当時のデーラーの話しでは、変形 (強度不足) によるベアリングのガタが発生するこを聞いていた。結果的にノイズの発生となった。しかし、形状はそのままで鋳鉄になった。重量も相当なるもの増加の筈である。
- 参照:イベント:カーマガジン・クラシック・ウィークエンド (第五回)(2012年5月26日)
- PD100-539918 以降
PD100S-539264 以降
PD300-102773以降- 変更箇所:オイルイフィラーキャップの通気口の廃止他
- 目的:排気ガスによる公害防止への準備段階の暫定処置
- 参照:ヘッド周り - オイルフィラー&カバー
- PD100-542937 (S) 以降
PD300-103052以降- 変更箇所:SUキャブ、チョークリンクの形状変更
- 目的:チョークでのエンジン始動時のファーストアイドル、スロットルバルとの連動開度を適正化して安定化を図る。
- 参照:SUキャブレター - 基本データ
- PD100-542902以降
PD100-543311 (S) 以降
PD300-103092以降- 変更箇所:アクセル・ケーブルの内面にテフロンを使用
- 目的:摺動抵抗を減らし、しぶりを防止する。これにより、一時的にあった,ケーブルのグリス・ニップルは廃止された。
- 参照:(執筆予定)
- PD100-542987以降
- 変更箇所:バック・パネルの板厚を0.7mmから0.9mm増加
- 目的:共振による室内騒音を低減のため。セダンのみでクーぺには対応せず。
- 参照:メンンテナンス - 防振対策関連
- PD100-545038以降
PD100-545135 (S) 以降
PD300-103260以降- 変更箇所:フューズ・ボックス&イグニション・コイルの配線
- 目的:フューズ・ボックスの10Aフューズ(Ig〜S間)が溶断した場合、スタータは回るが、始動しないという不具合を解消するため、イグニション・コイルへの配線はフューズを通らないよう変更する。
- 参照:点火系統 - 基本データ
- PD100-545973以降
PD300-103443以降- 変更箇所:ブレーキおよびクラッチのパイプのジョイントをインチからミリサイズのねじに変更
- 目的:ルノー4CV以来の国際規格であるSAEのインチ (3/8-24) を日本のJIS規格のミリ (10mm&P=1他)に変更。当時のトヨタ (RT-40など)はJISであり、この変更の時期 (1967年4月以降) からみて、コンテッサの延命のためか、それはトヨタへの統合も背景にあったのか (?).
- 参照:ブレーキおよびクラッチのパイプのジョイントをインチからミリサイズのねじに変更
- PD100-545973以降
PD300-103443以降- 変更箇所:クーペおよび1300Sに抵抗器外付き方式のイグニションコイルを採用
- 変更目的:力感&加速の改善をはかる。
- 参照:点火系統 - 基本データ
註:PD100はセダン ("S"を含む) 、PD300はクーペ。
目的などの表現・説明は、本サイト・オーナーの見解です。
参考文献:
- デーラー・ノート 及び パーツリスト
(SE, 2012.3.17, Original)
(Revised 2018.8.4)
(Revised 2021.1.4)
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