日野コンテッサ1300クーペの一般的に市販されたモデルは実はデラックスモデルと呼ばれるものである。当時の運輸省への「新型自動車の届け出の範囲及び届け出資料」によれば、カタログには存在して無かったデラックスモデルとスタンダードモデルが存在する。現存する「自動車諸元表1968年度、運輸省自動車局監修(社団法人自動車技術会)」からも明らかである。
事実上、どう販売されたか不明であり、カタログ上にも無く、価格表もない、しかし市場には明確な形で出回っている。仕様は下記にあるものの多くはセダン同様に購入者の要望を取入れアップグレードがあったことを想像する(日野に限らずどこのメーカーも当時は安いスタンダード車にデラックス車の装備を要望に応じてデーラーで受け入れたいた)。
ここでは届け出資料や当時の貴重な写真、そして現存する実車から特にあまり知られてないスタンダートモデルを検証してみよう。
初期のクーペのスタンダードモデル。典型的にシングルライト、モールディング無し。
【PD300型新型乗用車より(運輸省届出資料抜粋)】
日野PD300型乗用車は、日野PD100型乗用車を基本とした2扉クーペである。PD100型をの相違点は下記の通りである。
- 乗車定員4名、2扉クーペである。
- 前席の居住性を重視し、室内艤装、特にバケットシート、メーター、操縦装置など、スポーティな運転操作に適するように配置した。
- ボデーは、スポーティな空気抵抗の少ないスタイルなものである。
- 原動機は高速性能の向上のため、吸排気系、弁バネ、カム軸を改造し、圧縮比9.0として最高出力65PS/5500rpm、トルク10.0mkg/3800rpmの高性能なものである。
- 最高速度145km/h、登坂能力(sinθ)0.43である。
- トランスミッションは前進4段、後退1段で前進は全てシンクロメッシュである。コントロールはフロアレバーによる機械式リモートコントロールである。
- 前後サスペンション、スプリング及びステアリング、リタンスプリングを強化して操縦安定性の向上を図った。
- ブレーキは前輪ディスク、後輪リーディング・トレーリングとし高速時の安定性を高めた。
- 燃料タンクをトランクルーム内に設置して前輪過重配分を増加した。
- スタンダードとデラックスとあり、デラックスはスタンダードに対し、下記一覧表に締める様な仕様変更になる。
デラックス車艤装仕様一覧表
項目
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適用
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STDはシングル
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STDは無色
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- バンパーはオーバーライダをクッションゴム付のものとする。
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STDは小型
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STDは黒
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新型自動車主要諸元表
指定自動車検査証記載事項一覧表(抜粋)
項目 |
デラックス車
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スタンダード車
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社名及び型式 |
日野PD300
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日野PD300
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類別 |
D(デラックス)
|
S(スタンダード)
|
車両車重(kg) |
945
|
895
|
乗車定員(人) |
4
|
4
|
車両総重量(kg) |
1,165
|
1,115
|
長さ(m) |
4.150
|
4.090
|
幅(m) |
1.530
|
1.530
|
高さ(m) |
1.340
|
1.340
|
客室内側寸法(m) |
長さ |
1.645
|
1.645
|
幅 |
1.280
|
1.280
|
高さ |
1.120
|
1.130
|
空車時荷重分布(kg) |
前輪 |
365
|
335
|
後輪 |
580
|
560
|
積車時荷重分布(kg) |
前輪 |
460
|
430
|
後輪 |
705
|
685
|
積車時前輪荷重割合(%) |
39.4
|
38.6
|
輪距(m) |
前輪 |
1.235
|
1.235
|
後輪 |
1.225
|
1.225
|
原動機の形式 |
GR100
|
GR100
|
総排気量(L) |
1.251
|
1.251
|
燃料の種類 |
ガソリン
|
ガソリン
|
軸距(m) |
2.280
|
2.280
|
オーバーハングボデー後端迄(m) |
0.960
|
0.960
|
タイヤサイズ |
前輪 |
5.60-13-4PR
|
5.60-13-4PR
|
後輪 |
5.60-13-4PR
|
5.60-13-4PR
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最大安定傾斜角度(度) |
右 |
48
|
48
|
左 |
48
|
48
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車台番号 |
打刻様式開始番号 |
PD300-100001
|
PD300-100001
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打刻様式開始年月日 |
昭和39年8月5日
|
昭和39年8月5日
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原動機の形式 |
打刻様式開始番号 |
GR100
|
GR100
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打刻様式開始年月日 |
昭和39年2月10日
|
昭和39年2月10日
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備考 |
明細諸元表 |
別紙
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別紙
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灯火計器等明細表 |
別紙
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別紙
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通称名 |
コンテッサ1300クーペ
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コンテッサ1300クーペ
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- 1967年1月、全日本カークラブ・コンペテションの船橋サーキットに於けるクーペ・スタンダードベースのレーシングクーペ。米国チューン(チームサムライ)のこのクルマはT-1クラスでブッチギリの勝利を得た。当時のカーマガジン(ベースボール・マガジン社)1967年3月号より。
- クーペ・スタンダード車からGT Protoのテールウイング性能を記録する。場所はおそらく谷田部である。バンパーはゴム無しオーバーライダ、ライトも形状からシングル、そしてウンドウのモールドなどは無し。撮影時期は1965年と推測する。(時期、特定中)
- LA Times GP優勝車(これもクーペスタンダードベース)の富士でのテスト、1967年3月。手前のクーペは明らかにスタンダードベース。各種モールなし、バンパーの特徴などがそれを表す。よく検証するとこの車両はスポーツキットのマフラー、そしては試作と思われるホイール (二種類あった中の個人的には好ましいタイプ) を装着している。
- 同車両のシートが最大の特徴。これは当時、非常にまれに見られたリクライニング機構無しのクーペ用シート。後部シート乗り入れのためと若干の角度調整をする簡易な機構である。このシート自体が運輸省届出資料の図面そのものである。
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