ブログ掲載:2024.1〜2024..7
1. プロローグ - 日野コンテッサ1300クーペの現状とオーナー (2024.1.21)
2. 60年前の設計&製造であることを忘れてはならない (2024.1.27)
3. ベンデックス型キャリパーの特徴&利点 (2024.2.17)
4. ベンデックス型キャリパーの特徴&利点 - 続き (2024.2.18)
5. ベンデックス型キャリパーの特徴&利点 - 続き (2024.2.19)
6. ベンデックス型キャリパー&ディスクローターの特徴&利点 (2024.2.20)
7. 問題点とその対処のその1 - ピストン&自動調整機構 (2024.2.23)
8. 問題点とその対処のその2- キャリパー強度 (2024.2.25)
9. 問題点とその対処のその3 - パッド (2024.3.10)
10. 問題点とその対処のその4- ディスクローター (2024.3.14)
11. 問題点とその対処のその5 ディスクローター - 続き (2024.3.16)
12. 問題点とその対処のその5- エアブリーダプラグ (2024.3.17)
13. 問題点とその対処のその6- ブレーキサーボ (2024.3.23)
14. 改善アイデア - 基本となるフォーム・フィット・ファンクション (2024.4.3)
15. 改善アイデア - ここまでのまとめ&整理 (2024.4.14)
16. 改善アイデア - デシジョンツリー (2024.6.9)
17. 改善アイデア - 方法1:無改造でアップグレード (2024.6.16)
18. 改善アイデア - 方法2:キャリパーをアップグレード (2024.6.23)
19. 改善アイデア - 方法3:ローターをアップグレード (2024.7.1)
20. 改善アイデア - 方法4:ローター&キャリパー共にアップグレード (2024.7.24)
21. 改善アイデア - 注意:2PSI 残圧バルブ (2024.7.26)
22. 改善への参考例 - ダンロップタイプ (50mm対向型ピストン) (024.7.29)
23. 改善への参考例 - 一般的なLD19 (AP Racing - CP2505) の同系統キャリパー (024.7.29)
24. エピローグ - これはやるしかない (2024.7.31)
1. プロローグ - 日野コンテッサ1300クーペの現状とオーナー (2024.1.21)
日野自動車:日野コンテッサ1300クーペ整備解説書より抜粋
めざとい皆さんはお分かりのようにこれは日野コンテッサに使ったブレーキの図ではない。本家のルノーR8のそれである。何とも軽率な整備解説書である!
一昨年の秋口からあることがきっかけで再び、日野コンテッサ1300クーペのディスクブレーキの課題&解決策 (新品が無いので) を考え始めています。
折しも2ヶ月前の11月末、北関東のコンテツ・エンスーの皆さんとお会いする機会がありました。外観も実に綺麗になり、エンジンもOHした素敵なコンテツをワインディングロードでドライブさせていただきました。
自分がコンテツの味を忘れてしまったのか、あるいは普段乗りの現代車に慣れてしまったのか、確かにブレーキを踏んでも一向にパッドがディスクをちゃんと噛んでる感覚がなく、少々リスキーな思いをしました。
皆さんとそこでの会話は、こんなもん、ちゃんとドライブしているとか、過酷なドライブはしないし、などなどコンテッサ乗りたちは問題視しているようには見えませんでした。
そこで思い出したのが「コンテッサのブレーキは本当に効かないのか?」、その昔、愛好家クラブに在籍中、多くあった話題にメスを入れたものです。当時もやはり、そんなもんという意見が多かったのです。(続く)
2. 60年前の設計&製造であることを忘れてはならない (2024.1.27)
先のこのテーマで古のレポートの「コンテッサのブレーキは本当に効かないのか?」を紹介しました。
この記述でお分かりのように日野コンテッサ1300クーペの日本車初のディスクブレーキはまったく効かない訳ではないのです。ポイントは例えば、一般的なパニックブレーキングの0.6gを得るには37kg程度の踏力が必要なだけです。
この30kg越えの踏力は60年代当時のディスクブレーキ装着車では一般的なものでした。しかし、70年代にはすべての車種でサーボ付きとなり20kg前後と軽くなり、その後はさらに進歩し、80〜90年代には10kg以下となり、進歩は止まらず今日に至っています。
効かないというよりは乗り手の方が何故かを理解する必要があるだけです。実際、車検の際のテスターでは現代のクルマと同等程度の性能を示しています。
ただ、60年前に設計&製造された代物であることを忘れてはなりません。
3. ベンデックス型キャリパーの特徴&利点 (2024.2.17)
「日野コンテッサ1300クーペのブレーキ - 本当に効かないのか?」は、ちゃんと効くのだを前提に、現代のディスクブレーキにない特徴や長所を確認しましょう。
最大の特徴は、ベンディクス (Bendix) 型のピストンの戻りの自動調整機構です。ピストンとキャリパーの間のシール (ゴムで柔) とピストン内部のフリクションリング (鉄で固い) の力関係を利用し、ブレーキペダルを放した際に、ローターとパッドの間のクリアランスを常に約0.7mm程度に保っていることです。
この機構、その後の技術では単にピストンとキャリパーの間のゴムシールだけで実現できるようになりました。ベンディクスも後のR12とかR5のこのキャリパーをベースにするもののメカニカルな自動調整機構は廃止されました。
しかし、このメカニカルな自動調整機構にも大きな利点が今でも存在するのです。それはルノー R8もそうですが日野コンテッサ1300のような床下の低い位置にあるマスターシリンダーとの組み合わせでは必須なのです。 (続く)
4. ベンデックス型キャリパーの特徴&利点 - 続き (2024.2.18)
画像はピストン内部の自動調整機構をOHした際のものです。フリクションリングの遊びがピストンの戻りを制御して、残圧に関係なくローターとパッドの間に常に一定のクリアランスを保つのです。
マスターシリンダーがキャリパーの位置より高ければ常に程度の残圧が発生し、ペダルをリリースした際もシリンダーをあまり戻すことなく、ほどよくローターとパッドの間を保てる、これが現代のディスクブレーキ含めての動作です。
しかし、マスターシリンダーがキャリパーの位置より低くなった場合、ペダルをリリースした際、残圧がなくなり、キャリパーシールのなすがままにピストンが押し戻されます。これを制御するのもこの自動調整機構なのです。
日野コンテッサで仮にこの自動調整機構がなかった場合、次のブレーキ動作ではピストンが過大に戻っているのでペダルストロークが大きくなってしまい、違和感を発生させます。しかし、それでブレーキが効かないということではなく、フィーリングの問題です。(続く)
5. ベンデックス型キャリパーの特徴&利点 - 続き (2024.2.19)
マツダ コスモ APの整備書より:基本的に10年も前の日野コンテッサと同じ自動調整機構をもつ。整備書の勘所もホボ同じ記述である。但し、キャリパーマウントの構造とパッドの固定方法は進歩、丁度、ルノー系のペンディックスの進化と一致する。
キャリパーとマスターシリンダーの高さ関係と残圧については、ホットロッドのようなカスタムカーの世界でその問題への対処がなされており、その対策部品も販売されています。
米国のEngineered Components,Inc.はその老舗でこの問題について丁寧に解説しています。また、対策部品は2 PSI Residual Pressure Valves (2PSI 残圧バルブ) として、今では日本含めてどこでも購入できます。因みに後輪ドラムブレーキの残圧バルブは10PSIとなります。
Bendixのメカニカルな自動調整機構を持つキュリパー、前述のようにR8/10あたりが最後になったと分析しております。それ以降は廃止され、キャリパー形状は似ているものの、単純なシールのたわみによる構造になりました。
しかし、得意な例として画像のような、Bendixのメカニカルな自動調整機構を1970年代半ばになっても踏襲していたのがマツダ コスモ APの後輪です。その背景はまったくもって不明です。整備解説書にはコンテッサ同様にフリクションリングのクリアランスが0.7~0.8mmとあります。
次はコンテッサ1300クーペのディスクブレーキの長所&短所にふれましょう。(続く)
6. ベンデックス型キャリパー&ディスクローターの特徴&利点 (2024.2.20)
日野コンテッサ1300クーペの前輪ディスクブレーキの最大の利点&長所は、今となってはその重量だと考えます。
例えば、ローター、画像のように約2.4kgです。現代の一般車に比較することは異論もあるものの1/3程度です。現代のクルマはキャリパー、ホイール、タイヤが巨大になり、とてつもないバネ下荷重なのです。
加えて、ベンディクスのキャリパーはアルミ製でおよそ1kgと実に軽いのです。現代のそれは鉄のキャリパーとそのサポートマウント含めてとんでもない重さです。
タイヤ&ホイールを含まないバネ下荷重は現代車の1/3〜1/4と超軽量なのです。これがなんと言っても日野コンテッサ1300クーペの足回りが軽快なことを物語るものです。現代車はとてもかないません。
日野コンテッサ1300クーペのこの大きな利点を大いに享受すべきであります。昨今の旧車メディアに登場するようなビジュアル先行でしょうか、やみくもに強化し、バネ下荷重を不当に過大にすることは歓迎するものではありません。
見てくれだけでなく、車重、馬力、そして運転操縦性など総合的に考えることが必要であります。
7. 問題点とその対処のその1 - ピストン&自動調整機構 (2024.2.23)
フリクションリングの正確な取付方法は以下を参照:
参照:日野コンテッサ1300クーペ整備解説書_7_第7章_ブレーキ
問題点とその対処のその1、ピストンとその内部の自動調整機構です。まずは固着の原因にもなるサビと汚れです。とにもかくにも工場出荷後の新車のごとく、綺麗にすることが必要です。
サビについてはグリコール系のブレーキフルードでは避けて通れません。汚れもピストンは車検など定期的にメンテされますが、その内部の自動調整機構はおそらく何年も手付かずで鉄の材質でもあり錆がはこびっています。ピストンの戻りが悪いなどの要因を発生させる可能性もあります。
いずれも綺麗にするほか手はありません。特にフリクションリングの動きに注意が必要です。規定のクリアランスの範囲で遊びがあることが必要です。また自動調整機構のフリクションリングの取付方向に結構誤りを見受けます。
この方向を誤るとエアが完全に抜けません。過去、自分のコンテツでも車検後にありました。また、やはり車検後の友人のブレーキのフィーリングですぐに断定、その場でバラしてみたら案の定、フリクションリングの取付方向が間違えていました。おそらく整備屋さんたちが原理・原則をちゃんと理解してないのでしょう。
8. 問題点とその対処のその2- キャリパー強度 (2024.2.25)
キャリパーの強度&疲労具合の試験の方法:Brake Handbook P106抜粋
問題点とその対処のその2です。まず、キャリパーのボデー、特にフィーリング&効きに左右する強度です。画像にルノーR8、言わば本家のキャリパー、そして右側にベンデックスを国産化した曙製のコンテッサ用を示しました。
明らかにルノーのそれは強靭なリブに見えます。コンテッサのそれはなんとも貧弱に感じます。おそらく初期型で問題があったのでしょう。すぐにリブを改善したようです。
この初期型/改良型の強度の数値をとる試験をしてませんが、当時、明らかに効くのと効かないのがあったのを肌で感じてました。おそらく問題の一つはここにあったと分析してます。すなわち、すくなくとも改良型を使う必要があるということです。
60年も前の代物です。幾度なく圧力をかけられ金属疲労は避けられません。個体差もあると思います。そのチェック方法が左下です。今後もコンテッサを乗るならば、すぐにこの程度の試験をして、良好なキャリパーを選択することが求められます。ぜひ、実施したいものです。
9. 問題点とその対処のその3 - パッド (2024.3.10)
ディスクパッドとその取付の全般&詳細は以下を参照:
日野コンテッサ1300クーペ整備解説書_7_第7章_ブレーキ、または
Renault 8, 10, 1100 OWNERS WORKSHOP MANUAL (P110)
問題点とその対処のその3、パッドです。画像の右上が当時のものです。暑さ&形状などがよくわかります。中央が、ブレーキ屋で古いベースプレートを生かして半世紀を経て制作したものです。
左がご先祖のルノー R8 (アルピーヌ A110やパナールなども) のパッドです。同じ形状なのでコンテッサにも使用できます。ただし、構造上、厚みは画像からわかるように若干薄いです。当時、フェロードの日本代理店では「コンテッサ用」として販売してました。ルノー用は今でも国際的に多く出回っており実に適正な価格で購入可能です。
画像右下は何年か前に友人から託されたパッド、使い果たしたのかバラバラです。おそらく再生した際の問題だと、またパッド部分も変なカットであり、疑問のあるものでした。最近も有名旧車ガレージで整備されたパッドで同様な異常を発見しました。いずれにせよ、画像のように適正な形状&材質かつ適正なプロセス&価格ですぐに再生できるのです。
パッドの組付けで注意したいのが画像左下に示したブラケットとのクリアランスです。ルノーの整備書にはこの関係&調整含め懇切丁寧に書かれていますが、コンテッサの場合、さらって書かれているので見逃しやすい部分です、注意しましょう。
10. 問題点とその対処のその4- ディスクローター (2024.3.14)
問題点とその対処のその4、ローターです。画像左上が新品 (リプロ) の状態です。厚さは正規の7mmです。しかし、新品でも一旦、使ってしまえば数百キロの走行でもが画像右上のサビが発生してしまいます。これは宿命です。
そして一般的な使用過程にあるコンテッサクーペは画像左下のようにサビとともに表面が荒れてきます。グリコール系フルードの影響もあります。いずれせよ、使用限度:5mmと整備書にはありますがペナペナな感じであります。ローターそのもの素材が良好で削り代があれば研磨もよいでしょうが何しろ60年モノです。数知れず、加熱&冷却を繰り返されてきたのです。
ベストなソリューションは新しいローターを作るということです。今では一品ものも難しくないでしょう。考慮すべき点は、古いローターに手を加えても良くはならないこと、また代替えを考えても人件費含むトータルなコストを考えれば、一品でも制作したほうがコスト的にもメリットがあると思います。
全く同じものを再現するのも良し、すこし改良 (材質や厚みなど) を加えるのもいいでしょう。やる気があればできることです。なお、画像右下はグリコール系フルードに替えてシリコン系フルードを使用したもので、サビとは隔絶した世界となります。
11. 問題点とその対処のその5 ディスクローター - 続き (2024.3.16)
問題点とその対処のその4、ローター (続き) です。ローターの厚さ:7mmについてです。現代の感覚から言ったら超薄いと思うのは無理からぬことです。
何年も前に自宅にプロの整備屋さんが客とひょっこり来られました。整備中のボクのコンテツのブレーキローターを見るなり、「こんなペナペナ、すぐに割れてしまうヨ」と一笑に付したのです。その何気ない言葉に心が大きく痛みました!
7mmというのは本当に薄いのでしょうか?ルノーR8のそれは6.5mmです。確かに60年代後半以降のルノー車やドイツ系も「性能に合わせ」、徐々に厚くなっています。それに伴い重量も増します。使用末期の5mm台は薄いでしょうが、自分はコンテッサにとって、7mmは必要にして十分と考えます。
使用過程の60年モノにバイバイしてローターを最新の材質で新造するのであれば、大幅な重量増を受け入れ、現代流に、例えば10mm厚も悪くはないでしょう。その場合、手軽に入手できるルノーの薄いパッドも功を奏するしょう。ただ、趣味のクルマとしての使用状況を考慮すれば、サンデーレースに供しても7mm厚の新造品で問題はないでしょう。超軽量ですし...
12. 問題点とその対処のその5 - エアブリーダプラグ (2024.3.17)
問題点とその対処のその5、 エアブリーダプラグです。所謂、エア抜きのスクリューです。経年使用の溝のアレやサビの発生、そして固着などの問題です。キャリパー二つに加えて、後輪のドラムブレーキのシリンダーにも、すなわち、計4つ必要です。
この部品についてよく質問を受けます。その誰もがどの車種のものが流用でき、その品番を教えて欲しいというものです。プロの整備屋さんからもあります。
実はこの部品、世界的な規格品です。その一つの7.0mmX1.0というサイズです。日本国内の検索では品番主義のようでこれでは見つけることが難しい様です。しかし、グローバルでは例えば、「Brake Bleeder Screw 7mm 1.0」で簡単に見つけることができます。これも「フォーム・フィット・ファンクション」のセオリーです。
いずれにせよ、日野コンテッサ1300には、このサイズで問題なく使えます。ただし、長さについてはいくつかあります。長いものは必要なく、画像左上の短いもので十分であります。
13. 問題点とその対処のその6- ブレーキサーボ (2024.3.23)
問題点とその対処のその6、ブレーキサーボです。ブースタとか倍力装置と呼ばれ、ブレーキペダルの踏力を軽減し、そのエネルギーにキャブの負圧を利用していることです。
現代のクルマでは常識の装置ですが、当時はほとんどのクルマはこのサーボがついてません。コンテッサクーペなどはとんでもない踏力が求められ、結構、多くのクーペが後付けで装着していました。画像のような林精鋼のニューバイカ (1960年発表) などのおかげて大幅に軽減することができたのです。
しかし、短所もあり、加速後の急ブレーキの際に負圧の激減によるサーボ不足で、時には肝を冷やす場面もあったのです。友人から譲り受けた「デルダンディツーリング」、ジーゼル機器の小型のサーボ、結局は気持ちが悪く外していましました。しかし、新潟で購入したクーペはそのような現象はなく、こちらはエンジンルーム、すなわち負圧発生源のすぐそばに小型トラック用の大型のサーボがついてました。
今では画像のような後付けのニューバイカは入手不可ですが、eBayなどでが英国のLucas製やイタリアのAlfa Romeo用がリーズナブル価格で入手できます。しかし、ダイアフラムなどは定期的なメンテナンスが求められます。最近では負圧の変化の問題は電動真空ポンプを利用して解決しているようです。EV系車両の進展でBoschのiBoosterのように電動式が一般的になりこの分野の未来は旧車にとって明るいようです。
14. 改善アイデア - 基本となるフォーム・フィット・ファンクション (2024.4.3)
前回のまとめの項の課題と対策・周囲事項をもって表題のコラムを一応完了としました。せっかくですから昨年来、考えていたアイデアなどをこの先、数回、記述しましょう。
まず重要なのは純正品のローターの寸法です。これを知ることは基本中の基本です。すなわち、フォーム・フィット・ファンクションのセオリーです。
ここで「日野コンテッサ1300クーペ整備解説書_7_第7章_ブレーキ」にある図のおかしなことに気がつきました。そこの図7.10のローターの直径は「220」、この数値はどこから来たのでしょうか?図面でしょうか?でも本文の仕様には「224mm」とあるので良しとしましょう。実測値は「224mm」なのです。
さてこの先はここ10ヶ月くらい、色々、ブツを含めてリサーチした結果のダイジェスト、そして最終稿では自分ではトライしてみたいという結論で締めくくりましょう。
15. 改善アイデア - ここまでのまとめ&整理 (2024.4.14)
ここでまとめの項としましょう:
1. コンテッサクーペのディスクブレーキは正常であれば必要十分以上に制動力をもっている。また、超軽量な構造はそのメリットを大いに享受すべき。
2. しかし、60年前の製品であり、現代のクルマと同じように考えてはならない。現代車のようにパワーアシストがないことを留意すること。最新のクルマとの比較だと10倍くらい糖力は必要である。それをわきまえて、常に気をつかう、あるいはDNAのごとく体力をもって身につけることが必要である。
3. 60年前の部品であること。キャリパーやローターについて再考しなけれならない。キャリパーは改良後の良品を選択して使うこと。ローターはおそらくすべての使用過程の個体は新造を考えた方が良い。
4. パッドはルノーR8用で十分である。またブレーキ専門工場で現代の材質かつ好みのフィーリングで再生できる。
5. パワーアシスト・デバイスは効果的であり、特に現代の交通環境では安全にもつながる。欠点を理解して使うこと.またテクノロジーの進歩は受け入れる。
6. その他、消耗品 (キャリパーシール、フルード、ワッシャ&ボルトなど) は常にフレッシュなものを投入すること。
以上はあくまで常識的な一般的事項であり、個体により、より仔細な点に考慮が必要でしょう。“旧車は走ってこそ” です。
16. 改善アイデア - デシジョンツリー (2024.6.9)
本課題、長くなりましたが終結&収束するための纏めです。過去、1年余り、誇大妄想含め、色々と具体策を検討してきました。整理してみると画像のようなデシジョンツリーにしてみました。すなわち、
方法1:無改造でアップグレード
方法2:キャリパーをアップグレード
方法3:ローターをアップグレード
方法4:ローター&キャリパー共にアップグレード
と、なります。この後、各々について、検討した内容を記述しましょう。そしてその前に重要な前提事項を以下の様にしました:
1. 13インチホイールが使える。
2. コンテッサの美点であるバネ下荷重を大きくふやさない。
3. コンテッサ側を改造しない、あるいは壊さない。
4. 補修品の部品が安価且つ入手容易なこと:ローター、パッド、シールなど。
5. パッドホルダーがブラケットでなく、キャリパー側であること。
6. 取付構造がシンプルなこと。
7. どこでもだれでも整備できること。
8. 加工量が少ないこと。すなわちコストが減らせる。
17. 改善アイデア - 方法1:無改造でアップグレード (2024.6.16)
まとめとして先の「2024.6.9 日野コンテッサ1300クーペのブレーキ - 本当に効かないのか? (16)」に記述の「方法1:無改造でアップグレード」について、記述しましょう。結果的に新しいアイデアとかいうモノでなく、あたりまえの留意点となります。
(1)強度が十分ある良好なキャリパーボデーを選択する。
(2)ピストンはおそらく問題はないだろうが無傷のものを選択する。
(3)自動調整機構は整備マニュアルにあるように正しく組み込む。
(4)ローターは60年ものを継続使用するかは大きな分かれ道。規定値の厚さがあり、ダメージの少ないものであれば、表面の研磨で使えることもあるだろうが、多くは期待してはならない。同じモノをオンオフでも作ることを奨めたい。
(5)パッドは純正品に忠実なものを製作する、あるいはルノー用を使用、何れにせよ、材質には好みを含めて留意すること。
(6)ボルト、ワッシャー、シール、ピン類は新品を入れること。
(7)とにもかくにも全体至る所の事前の正しいプロセスでのクリーンアップを忘れずに。綺麗にすることはダメージを発見する最短の道!
以上
18. 改善アイデア - 方法2:キャリパーをアップグレード (2024.6.23)
先の「2024.6.9 日野コンテッサ1300クーペのブレーキ - 本当に効かないのか? (16)」記述の「方法2:キャリパーをアップグレード」、誇大妄想を含みリサーチ。エビデンス抜きに簡単にアイデアを紹介します:
(1)前提条件:標準のディスクローターが十分な厚さがあり疲れてないこと。表面は適切に研磨され、厚みは6.5mm程度はあること。
(2)キャリパーの選択:例えば、コンテッサ (アケボノ) と同じサイズ (1.625インチ) のピストンを持つ「MSE Gem LD19 Brake Caliper (FF1600), 1.625" Pistons」、古くはAP製、製造中止後、新たなメーカーから供給され、データも豊富。パッドも同様。対応ローター厚もコンテツ並みである。
(3)キャリパー取付ブラケット:この課題に多くの車種で対処がされてるので難しい問題はない。いくつか画像に紹介。新たに制作要 (DIYでも可能)
(4)課題1:ホースの取付は市販のアダプタ&フィッティング部品使用。
課題2:ローターのダストカバーは干渉するので切り貼り細工が必要、あるいは最適なモノを創るのが良いだろう。 (DIYでも可能)
以上は、非常に楽観的だが、自分だったらこれでイイだろうと考える方法です。時間と資金があったら進めてみたいです!とにかくコトを難しく考えないコトと実践するコトが重要!
19. 改善アイデア - 方法3:ローターをアップグレード (2024.7.1)
「2024.6.9 日野コンテッサ1300クーペのブレーキ - 本当に効かないのか? (16)」記述の「方法3:ローターをアップグレード」、例によって誇大妄想を含みリサーチ。勿論、ベストはオリジナルのローターと同じモノを現代の材質で新造することですが、簡単なアイデアを紹介します:
前提条件1:標準のキャリパーの強度が十分あり、ピストン&自動調整機構が正常なこと。
前提条件2:ローターの直径は224mm&厚みは7mmに限定、ただし、厚みはルノーのパッドの使用で11mmまで許容。
前提条件3:ローターの高さはコンテッサよりも小さいこと
ローターの224mm、すなわち8.8インチは、フォーム・フィット・ファンクションの原理・原則に基づいてリサーチ、それは特殊なものでなく、旧くはシトロエン BX (7mm) / XM (Saloon I II, 9mm) / XANTIA (除くHatchback,9mm)などの後輪、BXでは厚さ:7mmとコンテッサと同じ!、時代の進歩と共に9mmなどと容量を増しています。ある意味でブレーキローターのサイズの標準的なものと分析します。ただ、このシトロエンのものは前提条件3の高さが合致しないので対象から除外。
ここで色々課題が見えて来ました。ハブへの取付部分の形状が小さいものがない、ここはコンテッサのパッドのブラケットとの干渉が避けれないのです。
そこで最大限、妥協、すなわちブラケットの干渉や直径は手を入れることを前提に使えそうなローターをリサーチ、「Renault R5 標準ローター」に行き当たり、その結果が画像の「ポンチ絵」です。
ポイントはこの簡単な「新造のスペーサ」でこれでコンテッサのハブキャリアにルノーのローターを使おうというものです。ローターの価格もUS$13.99!。このアイデアはCADやプロトなどで詰めたものではありません。しかし、自分としては少し、先が見えたと思います。特に「方法4」には絶大な効果になるでしょう。
20. 改善アイデア - 方法4:ローター&キャリパー共にアップグレード (2024.7.24)
「2024.6.9 日野コンテッサ1300クーペのブレーキ - 本当に効かないのか? (16)」記述の「方法4:ローター&キャリパー共にアップグレード」、もうお分かりと思いますが、 (18) のキャリパーと (19) のローターを組合わせることです。
ポンチ絵を画像に示します。コンテッサの基本的な部品には加工などせず、流用可能な一般市販の部品:キャリパーキットとローターを投入、そしてそのためのインターフェースをとるアダプターを制作することになります。
実際、イメージを通り越えて検討を進めると基本的な構想はこれで良し、しかし、その際に各部の干渉の検討が不可欠であることもわかりました。また、「2024.21 今更思うこと - 「工業化」って何なんだろう?」のように流用品の展開も大いに勉強したところです。
さてこの先はどうするか?自分で実践するしかない、13インチのワイド強化鉄ホイールを履いた我がコンテツが目の前に浮かんでくるようです。この先、人生は短い、うまくコトを進めよう。
21. 改善アイデア - 注意:2PSI 残圧バルブ (2024.7.26)
画像 (1995年10月、東京モーターショー展示に向けて) のような強化型13インチ鉄ホイールを履いた我がコンテツ、やはりこれしかない、これが一番、格好いいと、一味違うブレーキにしようと妄想が膨らむばかり!
今年の1月以来、リサーチの結果を記述してきた「日野コンテッサ1300クーペのブレーキ - 本当に効かないのか?」シリーズ、そろそろクローズしましょう。
実際は昨年の夏前からのリサーチの結果をまとめ、さらにリサーチを進め、なるべく現実に近い解を出すべく、前回の「方法4:ローター&キャリパー共にアップグレード」となった訳です。
この後はしっかりとしたCAD図を作成、干渉などのチェック、そして部品など入手して、アダプターを制作、そしてアッシー完成、実車取り付けしかないと思います。
最後にこの方法の場合、「2024.2.19 日野コンテッサ1300クーペのブレーキ - 本当に効かないのか? (5)」で記述の「2 PSI Residual Pressure Valves (2PSI 残圧バルブ) 」が必要なことに注意ください。
22. 改善への参考例 - ダンロップタイプ (50mm対向型ピストン) (024.7.29)
本シリーズは前回の「2024.7.26 日野コンテッサ1300クーペのブレーキ - 本当に効かないのか? (21)」で完結としました。
ここでは参考情報として標準仕様のアケボノ&ベンデックスタイプに変えてダンロップタイプ (50mm対向型ピストン) がついて紹介しましょう。
画像からわかるようにかなり一般的な構造になっており、このシリーズの方策の原点になっています。このダンロップタイプのキャリパーは、ホンダS800やマツダのファミリアクーペにも使われました。
日野コンテッサクーペの場合、床下のマスターシリンダーよりキャリパーピストンの位置が高くなる場合があるので、「2024.2.19 日野コンテッサ1300クーペのブレーキ - 本当に効かないのか? (5)」で記述のように「2 PSI Residual Pressure Valves (2PSI 残圧バルブ) 」が必要になります。
23. 改善への参考例 - 一般的なLD19 (AP Racing - CP2505) の同系統キャリパー (024.7.29)
本シリーズは前回の「2024.7.29 日野コンテッサ1300クーペのブレーキ - 本当に効かないのか? (22)」のように完結としました。
ここでは参考までに「2024.21 今更思うこと - 「工業化」って何なんだろう?」でも紹介した一般的なLD19 (AP Racing - CP2505) の同系統キャリパーを競技目的のワンオフモデルカーにどう取り付けたのか画像に示しました。
画像 (右下) で分かるように簡単な二つのワンオフのアルミブロック部品を制作してこの個体のサスペンションナックル (Le Grand製) に取り付けたものです。この二つの部品がナックルとキャリパーのインターフェースとなっています (フォーム・フィット・ファンクション 参照) 。
なお、このキャリパーは、競技用に多く使われている製品であり、強度を確保するためにモノブロック構造になってます。
24. エピローグ - これはやるしかない (2024.7.31)
本シリーズ、開始したのが1月21日、およそ7ヶ月、ダラダラと思うがままに今日まで来ました。代替品の現物含めてリサーチを開始した昨年の夏前ですので約1年も経たということです。その間、色々勉強させていただきました。
最大のポイントは、2月20日の (6) に記述した日野オリジナルの軽量さなどの良い点を留意することと考えます。そして対策の基本的なポイントは、4月3日の (14) に記述した通りです。ある意味では60年前の考え方や現物を使うべきかでもありました。
改善&改良、改造について、6月9日の (16) にまとめ、それを原点に具体策を検討しました。最終的には、7月24日の (20) のようにキャリパー&ローターを既製品を流用することでまとめました。
この最終案は実現の出発点にすぎません。現物をもって細部のすり合わせは避けて通れません。実際、7月30日の (23) のプロジェクトでも干渉を避けるためにキャリパーをちょっと削ったりしています。でもそのような過程が一番楽しいのかと思います。
日本の旧車界はフォーム・フィット・ファンクションのような文化が浸透してないので流用品で対処することがまだまだ進んでないように感じます。「2024.7.21 今更思うこと - 「工業化」って何なんだろう?」で記述したように、英国など文化が根本から違い、モノの考え方も自ら思考して何とでもなるという方法です。最近、発見した英国の記事を紹介して本シリーズの完結とします。参照サイト:Jonny's FLUX CAPACITOR