- ドアはサッシュを採用、4枚共に後開き (ルノー4CVは前ドアは前開き) 、リヤドアもワィンディンググラス付き (所謂、上下する、ルノー4CVは前後共にスライド) とした。フェンダはすべてボルトにより簡単に取り外しができ、修理の簡易化を計った。スペアタイヤはトランクルームと分離させ、最前部に格納させ、荷物の汚れを防止するとともに、衝突時のガードをも計った。
- 盗難防止装置を、ギアチャンジの装置な中に、独特のアイデアで設け、万一ドアを開いてもイグニションキーを短絡してエンジンを始動しても走行不可能なものとしてした。
- ワイパーは自動停止式、カーヒーターは温水循環式とし、クルマの前部から外気を取り入れ過熱し、あるいは室内空気での切り替えもでき、循環過熱がメーターパネル下のコントロールバーで簡単に操作できるものとした。
- その他、トランジスタラジオ、ウインドウォッシャなども採用した。
《性能試験》
運輸省の公式認定試験に正式により、車両重量が最も重い場合、すなわちデラックス車に5人乗りの状態で総重要:1,018kgによるのである。加速は、加速性能の図にあるように、発進加速で200mに到達する時間は15.8秒であり、これはルノー4CVに比較し1秒程度向上、1,000cc級の小型乗用車としては最も先行するもので、また3段トランスミッションの小型車としても充分なものであった。
燃料消費はついては、定地試験における燃料消費図のように、30〜50km/hの常用速度では、20km/リッター以上、70km/hでも18.5km/リッターと高速でも良好であった。一般公道、すなわち運輸省型式認定試験における東海道運行試験 (横浜・小田原間往復) においては、平均19.3lm/リッター (平均速度:46km/h) であった。
操縦安定性は、認定試験では実施されないが、社内の試験では、オーバーステア並びにアンダーステアの傾向がない、当時として新語にもなった「ニュートラルステア」であり、また旋回時の傾き、すなわちロール率も少ないものであった、手放し安定性も良好で、高速も一回で減衰をしている。
ブレーキについては、0.6gの急制動に相当する踏力は約20kgであるので、効きは良いものであった。50km/hからの急制動では11〜12mで停止した。ブレーキ時の車体の傾き (所謂、ノーズダイブ) は極めて小さいもので、重心が低いことと、上述の後輪のトレーリングアームによりアンチダイブ効果によるものであった。
《電磁式自動クラッチ:シンコー・ヒノマチック》
コンテッサにはオプションとしてシンコー・ヒノマチックと名付けた一種の自動クラッチを用意した。一般に2ペダル (所謂、アクセルとブレーキのみで、クラッチペダルが無い) のコントロールにはトルクコンバータが使用されるが、低出力エンジンに対しては自動クラッチの方が馬力損失が少なく、加速が良い点と燃料消費率が低下しないこと、あるいはブレーキが効くなどのメリットがある。日野自動車は、この自動クラッチの採用を企画し、神鋼電機 (株) の協力を得て電磁式クラッチの研究を行った。
クラッチ本体は下図に示すように、特殊金属製フェーシング使用の乾燥単板式であり、そのコントロールは独自の方法を採用した。変速時にギヤは噛み合う前に電源が切るためのスイッチが、チェンジレバーに組込まれ、また発進時にはゆっくりクラッチを合わせて円滑なスタートをしたり、途中での変速には円滑かつ迅速な操作が出来るような機能を組みこんだ。クラッチの電源として通常はエンジン付属の発電機の発生電力を利用し、エンジンの回転数によって制御が行われる。さらに、マニフォールドのバキュームによって可変抵抗を制御し、エンジン負荷によっても制御が行われるようにした。
以上により、ドライバーはただチェンジレバーのみを操作すればそれに伴って自動的に電流を断続し、さらにアクセルの踏み加減で自動的に電流は変化し、クラッチの適当なすべりを生み、円滑は変速が可能にした。発電機の故障などへの対策として、電源をバッテリーに切り替えるスイッチをメータパネルに設け、万が一のためにも変速可能とした。