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コンテッサ900スプリントは第44回トリノ・オートーショー(1962.10.31-11.8に開催)に出展された。これはモーターファンからの切り抜きである(写真:角田)。その記述には「ヒノ・コンテッサ・クーペ:893ccリアエンジンのコンテッサのシャーシの上にミケロティが美しい2ドアスポーツクーペのボディを架装したもの。ミケロティはファリナの教え子で線の使い方はファリナ調だが、若さのみなぎった明るさが特色。この車で流れるような線が特にみごとである」とある(解説:栗田)。
1990年10月号のノスタルッジックヒーローのグラビアに日野コンテッサ900スプリントが大きくリポートされた。確かにスプリントは美しくなっていた。ボクも日野本社で現物を見たり、まだクルマが新田工場の片隅にあった時代、新井さんの取り計らいでお目にかかった。そのとき、工場の人達がこのクルマだけは何時かきれいにして展示したいという厚い言葉はまだ忘れられない。とにかく日本の自動車の歴史においても重要なこのクルマに対する、この夢は実現されたわけで、われわれ外野もホットしているところである。
ところでよく考えて見て見ると、ちょっと複雑な思いがした。たぶん、先輩諸氏を含めて、コンテッサ900スプリントが四半期世紀前のモーターファン(1963年4月号)の切り抜きのような状態で、今にも目の前を軽快に通りすぎて行く姿を浮かべたのではないだろうか?また、そのドライバーは自分自身であったり。それは今でも変わらないのではないだろうか?
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群馬県新田工場に保管(1982.12.4撮影)
クルマである限り、持てる力をもって何時までも走ってもらいたい。我らコンテツも部品が不足した後も、10数年の努力により、今では新車に近いコンデションを保つようになった。それは、大変な時間を費やしている。これは、外観の見てくれだけではなく、目一杯走るということでもある。これはレースなどのモータースポーツなどでも活躍していることでもお分かりと思う。性能を向上させる方法は今でも昔でも、また、ファクトリーでもプライベートクラブでも同じなのである。特にちゃんと走るということは非常に大変な努力を必要とするものである。
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お化粧し直して日野本社に展示(上述のノスタルッジヒーローの同時期に撮影)
さて、ノスタルッジヒーローの載ったスプリントは?どう見ても我々のコンテツのように、走るように見えない。これでいいのだろうか?これは、ある種の先入観感かもしれないし、ボクだけのことかもしれない。
ボクが思うには、スプリントもたまには自走してきて様々なイベントに元気な姿を見せてほしいものである。それも足腰の弱った老いた厚化粧の伯爵婦人でなく、我々のあこがれの美しい、つまり元気な伯爵婦人であって。そして、できることなら、箱根のターンパイクで我々のコンテツと力比べをしたり、筑波や富士にも姿を現してほしい。やはり、クルマは走ってこそクルマであり、走らなければ1/1のプラモデル同然である。
色々と言いたいことを書いてしまった。何故かというと、コンテッサ900スプリントには美しい姿を部屋の中で横たわるだけでなく、目一杯走れるコンデションになってもらいたいためである。これには資金も必要だが、技術も必要である。特に技術については、部品のなくなったクルマを走らすには、それなりのノウハウが必要であり、それは新車を開発する技術とは異なるものである。幸いにも我々には、10数年に渡るノウハウの蓄積がある。ひょっとしたら何かお手伝いしたら目一杯は走る姿が目にすることができるのでは? と、思うのはボクばかりでないのではないだろうか?日野さん、どうでしょうか?(仕様&カタログ等関連情報)
(SE, 1990.9.30, Original)
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