日野コンテッサ900スプリント・デザイン考:それはモジュラーデザインの先駆者だった!
1962年のイタリア、トリノショーで美しい日野コンテッサスプリント900はデビューした。日本では「ジョバンニ・ミケロッティ氏の最高傑作」と一般にメディアを含めて、そのように語られたり、記述されることが多い、あるいは定説のようにもなっている。それはそれで否定するつもりは毛頭ない。事実、当サイトオーナーも日野コンテッサのファンの一人としてそう思いたい。その簡素な美しいラインに魅せられた一人でもある。しかし、もっとを目をこらし、大きく開いて、氏の数千とも言われる作品を視て、その脈絡を分析してみるとかなり興味深いものが見え隠れすることが数年前から理解できるようになり、時折、その脈略を整理している。
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永らく日野新田工場に保管されたいた個体を展示保存のために外観を主体に修復し、日野本社の受付奥に展示されるようになった。 (1993年9月3日撮影)
日野コンテッサスプリント900直前のミケロッティ氏のデザインを見ると、氏のコンセプトなり考え方が見え隠れする。以下の写真は、Necker Mistral / Siata 1500 TS (1962年) 。ドイツのフィアット・グループの子会社、ミストラル (カロッツェリアの一種) のフィアットをベースとした特別バージョンである。これを見れば、このデザインから、日野コンテッサスプリント900へのスタイリングの発展は明らかである。これまた、簡素で美しいスタイリングと感ずる。フロントのデザインは後のトライアンフへの発展、さらに我が日野コンテッサ1300への脈略を感じ取ることが出来る。
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このSiata 1500 TSには、サイドとにミケロッティ・マークは存在してない。おそらく契約により、デザイナーは明かさないというのものであろう。日野やトライアンフはマークを付け、BMWやDAFなどは付けなかった。
次は、Morretti 2500 SS Coupe (1962年) 。フィアット2300ベースのカロッツェリアのモレッティ社の製造・販売 (イタリア) 。ミケロッティ氏は、1950年代から多くのカロッツェリアと仕事をしており、このモレッティ社にも多くのスタイリングを手がけた。このMorretti 2500のフロントエンドを見れば、日野コンテッサスプリント900のフロントの処理は明らかな脈略を見ることができる。コンテッサはフロントにラジエータがないのでその部分を上手く処理をし、バンパー含め全体を小振りにしたまでた。日野コンテッサスプリント900の前照灯がやけに大きくみえてしょうがないのは、このMorretti 2500のデザインを発展させる上で唯一そのままスケールダウン出来なかった部分 (すなわち、購入品:Eirolux製) であったのだろうと推測する。
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多くは米国顧客に輸出されたようで、当時のカロッツェリアの重要市場でもあった。この写真も米国での最近のオークションのもので、前のオーナーは有名歌手だったようだ。
これは、マセラティ 3500GT セブリング、ヴィニャーレ (イタリア) が1961年のトリノショーにそのプロトタイプを出展したもので、このデザインから上記のNecker Mistral / Siata 1500 TSとMorretti 2500への脈略を伺い知ることができる。
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1961年のトリノショーの後に生産化。今でも多くが存在し、この写真もその一台のようだ。
例証のためにまだまだ数多くのデータがあるが、上記の三つの例で、日野コンテッサスプリント900へのデザイン&スタイリングの流れが分るというものだ。すなわち、フロントはMorretti 2500 SS Coupe、その以降はNecker Mistral / Siata 1500 TSからのカット・アンド・ペースト (切り貼り細工、あるいはモジュラー・デザイン) となり、その上で全体&細部を仕上げたということになろう。と、いうと簡単だが、重要なことは、基本となる、パーツとか部位というデザインが、如何にしっかりと出来ているかということであり、その上に全体を纏める能力、コンセプト (顧客の要求とか市場のトレンド含めて) をしっかりと意図を貫徹できる誠に強い意志であるかである。それを今でも感ずることができる「日野コンテッサスプリント900」と考えている。また、今日でも世界中から愛されるミケロッティさんのそのような意志をもっている「日野コンテッサ1300」を今もって、所有し、ドライブ出来ることはこれ以上ない「人生の喜び」である。
ご参考:必見 - Givovanni Michelotti (designer) Wiki
(SE, 2012.10.27, Original)
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