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RRの再発見 - コンテッサ1300S(モーターファン、1968年5月)
当時の筋金入りの日野車オーナーであった静岡県浜松市在住だった鈴木 隆男さん(故人)のものです。このリポートは先のモーターファン、2月号に掲載された「コンテッサへの苦言 - 愛すればこそ書きもする」にあったコンテッサ1300Sの苦言への誌面を通じての鈴木さんの速攻的なカウンター(反論)でもありました。
まず、RR車は当時主流になりつつあったFF車と違い、前輪荷重が少ない故ステアリング操作が軽快、日本中の至る所にある上り坂や下り坂,カーブを思いのまま走行できること、そして箱根のような長い下り坂でもほとんどフートブレーキを使わず全力走行出来るのがRR車(氏は、当時、日野ルノー4CV、コンテッサ900S、そしてコンテッサ1300Sを所有していた)の醍醐味と前置きをしています。但し、RR車にサルーンのようなムードを要求することは見当違いとも付け加えて,以下のようなカウンターを述べられたのです。
- 排気量の割に車体重量が重過ぎ、加速に不満
900Sに比べて1300Sでは燃料タンクやバッテリーをフロントに移動し、車高も低くなり、車重もあるので100km/h以上の高速走行は申し分ない安定性あり。発進、追い越し加速はブルーバードSSSでもついて来れない。コンテッサのファンはこの敏感なレスポンスに引かれている筈。そのためにはロー、セカンドで5,000回転以上引っ張ることが大切とポイントを述べている。 - ガスの注入口がトランクルームの中
複数のキーが不要、サイドビューもすっきりしている(蓋が無いので)。エンジンキーだけでトランクからエンジンルームまでロック出来、ルノー以来の良い点である。
悪路で腹を打つ、オーバーハングが長い=>ひどい山道はさけるべきである。しかし、悪路、洗濯板道路でもヨタヨタする他車を尻目に全速で走ることが出来る。
そして強いて苦言を呈すればとして:
- エレガントなスタイルにしては中味がたくまし過ぎるとし、数年前に発表したコンテッサ900スプリントのボディに900Sのエンジンを5ベアリングにして、リヤもディスクブレーキしたものがカッコ良いものになるだろうとしている。
【温故知新的レビュー】
まずはこのような反論を堂々と述べた鈴木 隆男さんの心意気と言うかコンテッサに対するエネルギーと愛情に敬意、またそのことをちゃんと掲載した当時のメディア(モーターファン誌)を誠に評価するものです。
おそらく鈴木さんは当時日本では日野のコンテッサ撤退が明確になった後のRR車の運命に対する危惧があったのではないかと推測するものです。よく読んでみると正にタイトルの「RRの再発見」であり、カウンターは見事に「コンテッサは斯くして操縦すべし」となっております。さすが筋金入りのRR党、日野車党であったのです。
【鈴木 隆男さんの想い出】
氏との最初の出会いはPD300クラブ(後の日野コンテッサクラブ)創設期の1973年頃だったと記憶します。 当時私が在住していた三島市近くの長泉町のコンテッサ1300クーペの愛好者からクーペとスペアパーツをお譲りいただく話しがまとまりした。その方から静岡県内のコンテッサ・オーナーの情報をいただきました。そのお一人が鈴木さんだったのです。
氏はコンテッサクーペの愛好家クラブの結成に諸手をあげてくれました。当時は今の様に電子メールだとか携帯電話などの無い時代であります。また電話もまだまだおいそれと長距離電話をしているにはコストの高いものでした。結果的に手紙と相成る訳です。氏のアクションは大変素早く多くは翌々日には書簡速達(これが一番安く且つ速い!氏の奨め)で間髪入れずメモ書きのようなご返事をいただいておりました。
鈴木さんはクラブの運営に硬軟含め色々ご意見をいただきました。私の親以上の年齢差はあるものの若輩の子供みたいな私に色々ご指導をいただきました。氏は戦前の素晴らしいクルマについての造詣が深くコンテッサと格は違いますが、スペインのイスパノ・スイザ(ウッドのボートテールなど特に歴史的に有名)をHispanoとHinoの似たラテン的響きで両車の美しさをよく語られておりました。クルマについて単に走る道具だけではなく文化の香りというものを教えられたような気がします。
また職業柄、毎日のように外国誌(Wall Street JournalやTIME誌)を読まれていたようで、そこにクルマなど興味のある話題があれば例に依って書簡速達が飛んで参りました。また日本語訳を創られて会誌のネタにと送られてきました。
そんな鈴木さんのもっとも印象に残る場面は1975年夏の箱根のエコラン後の沼津での表彰・歓談会でした。15.1km/リッターを記録した氏がダントツ優勝した訳ですが、氏の弁は、「交差点で必ず他車を引き離すのコンテッサ(引き離さねばならない!)」と、豪語されておりました。伯爵婦人も実は鞭を入れRRらしく走るのだと言うものを今でも忘れません。自分がコンテツを今だ続けているのもその良い影響だと思います。氏のように一生、コンテッサにエールを、そしてRRを楽しむ所存です。
(SE, 2009.5.8, Original)
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