日野コンテッサ1300のリアのフェンダーとボデーの間には、細長い鉄製はパネルが付いています。目的は、第一に水の侵入 (最終的に後部床) を防ぐことでしょう。その証拠には、この細長いパネルとフェンダーの間には複雑かつ強固なゴム製シールがとりつけられています。第二の目的は、フェンダーパネルの補強と推測します。
この水の侵入について新車設計時の甘さと言うか何とも万全なものでありませんでした。さすが日野にもクレームがあった結果と思うが、デーラーには “つめもの” をする通達をしたようです。ただ、それは今日のリコールのようにオーナーにまで知らせが来るものでなく、所謂、オーナー自らクレームをつけた場合のみの対処方法でした。また、それは無償だったのか、時間工賃を請求していたのかは知る由もありません。いずれにせよ、製品として “欠陥” であったには変わりありません。
当サイトオーナーの二台目の日野コンテッサとなったクーペは結構早く自身でこの問題に気づき、自らつめもの (風呂場などのコーキング材) をしていました。当時、立ち上げたPD300日野コンテッサクーペクラブ (現日野コンテッサクラブ) で多くのボデーをチェックしたがどの個体も欠陥である最上部の場所に丁度「人さし指が入る」程度のすき間がありました。日野自動車はこの不具合に気がついていたものの、その対策はオーナーのところまでは届いてなかったのです。もちろん、その場で皆さんに処置方法を奨めたし、会報にも告知させていただきました。(コンテッサと “錆” )
最近の多くのコンテッサたちは延命のために大幅に手を入れられたものは、その際の鈑金屋のインテリジェンシーにより上記のような “錆” に対しての設計の不具合については解決されていると推測します。
当時はちゃんと防水の処理ができてないとこのインナーパネルの至る所に水が残るようで、結果的に内部から錆が発生し、ボデー本体を徐々に侵し、最終的には、フェンダーの外側までその痕跡が確認できるようになったり、フェンダーパネルのみならず、重要なボデー本体を蝕み、多くは骨粗鬆症の如く、愛車コンテッサの大切な骨格は消え去り、鉄の原料の土へと究極のリサイクルとなってしまいます。
現代のクルマの多くはこの種の問題を無視できるほど解決されております。フェンダーの材質はコンテッサの鉄と同様(一部のルノー車などのよう樹脂製もあり)ではあるが、中のインナーパネルは樹脂製になっており、隙間の処理も万全になっています。我がコンテッサにも同じ様なことが出来ないかと長年考えておりました。
以下のその対策部品の製作過程です:
- 樹脂の材料を探す:たまたま目の前に不要になったソフト・スーツケース(バリスティックナイロン素材,例えば、TUMIなど)があり、その構造材 (筐体の横の帯状のパネル) に強靭な樹脂(材料は不明、調査中)の帯が使われており、それを型 (実は後述のようにオリジナルの鉄のインナーパネル) を利用して、ヒートガンで整形すればよいだろうと考えた。
- 鉄のフェンダーインナーパネルから型紙(所謂、パターン)を作る。左右非対称なので一つ作ればよい。
- パターンをもとに上記の樹脂のパネルを切り出す。折れ曲がる部分について余裕をもって裁断する。
- 裁断したパネルをオリジナルの鉄のインナーパネルにクランプをもって固定する。すなわち、オリジナルの鉄の丈夫なインナーパネルをモールド=型として利用する。
- それをヒートガンで暖めて、整形する。これで樹脂材でオリジナルの鉄のパネルのコピーが出来上がる。
- ボデーにあてて形状を確認する。そして適切な位置に取り穴のボルトの穴を開ける。
- ゴムシール (使用部品:Aircraft Spruce社、OPEN CENTER CHANNEL #4) を取付けるためにフェンダー側の遊びを調整する。
- ゴムシールを接着剤(信越化学工業:液縮合型RTVゴムKE-45を使用)で固定する。1日程度はクランプで固定する。
- ボデーに取付ける。ボデー側、フェンダー側、共に接着材(信越化学工業:液縮合型RTVゴムKE-45を使用)でしっかりとシールする。そして、懸案の最上部の「人さし指が入る」場所は特に入念にシールを施すこと。
以上であります。
今回、ここで紹介した方法は教則本があったわけではありません。ある程度の時間をかけての構想と準備をもって、試行錯誤しながらの一気に進めたものです。完成した後の反省はやはり、素人であります。パネルのカットの余裕度、すなわちヒートガンで整形する際の曲がりしろのころ合いが問題です。これにはある程度、余裕をもって、大きめにして全体をカットしたほうがよいと感じます。
さらにこの方法は、不要になった製品であるソフト・スーツケースを再利用、いやその部品を分子レベルに戻さずも、材料として再目的化するものです。これは単なるリサイクルではありません。最近、にわかに必然性をもっての “循環経済 (The Circular Economy) ” 活動の一種と考えます。まさにソフト・スーツケースの構造材があらたな目的に向けた活路を見出した訳です。実にエコな日野コンテッサであり、正に「旧車 is Green」であります。
(SE, Original 2014.8.2)
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