“Wasted spark” イグニション (所謂、同時点火)


 “Wasted spark” イグニション (Waste:無駄とか浪費などの意味) とは、4サイクル内燃機関 (エンジン) に古くから使われている点火システムである。このシステムでは、圧縮行程と排気行程の両方でスパークプラグが点火する 。すなわち、排気行程の余分な点火は、余分なもの、すなわち用をなさない排気行程の点火として、“浪費 (すなわち、Waste) ” されている。このデザインは点火システムの部品の数を半減できるものの (ディストリビュータ不要など) 、電気的な抵抗など現象などにより、構成部品の寿命にも若干、影響もある (2倍の回数の点火でのプラグの寿命や倍の消費電力など)。参考までに、圧縮行程の点火には典型的に、8,000〜12,000ボルト程度のエネルギーが必要だが、排気行程の点火は、2,000〜3,000ボルトで済むが、圧縮行程と同じもので余分なガスを吹き飛ばし、結果的にクリーン度も増す筈である。

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日野コンテッサ1300専用キットのようにCOMPU-FIRE側の改造なくフィットさせた。ただメカ時代の旧車に電気・電子を入れるには多少の知恵・工夫が求められる。

歴史は結構古い!

 この“Wasted spark” イグニション・システムが新しいのかと考えると、実はそうではなく、知る限りでは、1948年のシトロエン 2CV (Citroën 2CV) には最初から組込まれている。その電気配線図には、明確にそのシステムを見ることができる (この配線図の4頁目の下の3のイグニションコイルを参照) 。正に “Simple is the Best” のコンセプトの雄であり、おそらくクルマ史の中での最高傑作と考えるシトロエン 2CV (Citroën 2CV) には、第二次大戦直後の市販時点から設計に組込まれていたとは頭が下がる!その後、近年には、メルセデス、ハーレー、マツダ、ホンダ/カワサキ (二輪) など、部品数の削減やスペース削減でより強力な点火を得るために用いられている。

同時点火、それは日本流の命名か?

 こんな歴史の旧い “Wasted spark” イグニションではあるが、日本ではだれが創った言葉か判らないが “同時点火” としてもてはやされる昨今である。本来は簡素化を目的としたこのシステムも日本の旧車界では何故か複雑化をさせているように思える。価格もしかりであり、ある意味では女性向けの高級な化粧品のビジネスモデルのように、あるいは自動車の高級なエンジンオイルのように高くするば売れるという、そんなことはないだろうか、それはよくある Placebo Effect (プラシーボ (偽薬) 効果) に通じるのかも知れない。いずれにせよ、同時点火、すなわち Wasted spark は新しいものでなく、旧い歴史があるもので、それはシステムを極力簡素化 (すなわち低コストで) し、最大のエネルギーを得ようというものであること理解することが必要である。

既製品キットをコンテツに流用!

 同時点火、いや Wasted spark、これを何とか、自車に試したくなるのは当サイト・オーナーだけではないだろう。ただし、日本の旧車界のような複雑&高価なものはご免である。簡単で理にかなった構造のものを探していたら、空冷ワーゲンの009ディストリビュータ用の Maid in California の簡素かつ大胆でスマートな造りのCOMPU-FIRE社DIS (Distributorless Ignition System:ディストリビュータ無しイグニションシステム) システムにたどり着いた。まずはこれで良いのだと、早速、タイミングを見て、大枚 (シンプルなシムテムなので日本の高級品に比べれば遥かに安い) をはたいて、南カリフォルニアの空冷VW専門店で実験程度と思い入手してみた (この製品は日本でも空冷VWの専門店で購入可能、“空冷 ワーゲン COMPUFIRE” - Google検索) 。

 早速、実験のために仮配線で動作させてみた (右の映像を参照) 。結果は、一発で我がコンテツのエンジンが動作したことが言うまでもない。効果については、もともと何十年もフルトラを使用しているので、よくネットで書かれてるような劇的な変化はアイドル状態では感じるものではない。この先、走ってみての感覚が問題であり、それについて、今後、このページに記載したい。

 このCOMPU-FIRE社DISシステムは、日本のブログでも色々書かれており、信頼性に今一と否定的な面が感じられる。これについてはその根拠、背景含めて真偽のほどは何も語られてない。一つ言えることは英語の世界でブログやフォーラムを見れば、世界中で使用されていること、またVWの009専用ではあるものの、他のエンジンにも多く応用されており、ポルシェの4気筒やオペルなど各車、スバルエンジン利用のホームビルドの飛行機に使った人も居るようで、要は「信ずるものは救われる」の精神でもってトライし始めた。また、なぜ、VWの009ディストリビュータのものがコンテツに装着可能なのかということは追って記述したい。結果は簡単なマジック (およそ3つ) であったものの、それを裏付ける創作の仮定は結構複雑なパズルであった。走行結果含めて、今後、記述したい。

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サウンドがまるで空冷ワーゲンの様、それ用のDISを付けたからか?そうではない、旧いソニーのデジカメがかなり狭い周波数帯域しか取り込まないためである。下のアイドル状態はiPhone 5であり、より現実のサウンドに近い。念のため。

参考映像追加:コールドスタート後のアイドル状況 (2014.12.23)

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使用一年を経過、その効果は?(2015.10.18)

 10月 (2015年) に入り、COMPU-FIRE社DIS (所謂、同時点火) システムはほぼ一年に達した。何か重大なトラブルがあったかと言えば、それは皆無である。取付初期は取るに足らない取付上の問題があったがそれはすぐに問題なくなった。一年を経た今月、走行には影響ないがタコが安定しないと言う現象が時たま発生している。取付当初にもあったのだが何事もなく消えてしまった現象である。タコの相性かもしれないので近日中に別な日野のものをテストしてみたい。

 先月9月末に、公道復帰後、2年目となる車検を受けた。一番、気になっている排ガスの測定値は以下の様である (  ()内は2年前の2013年の測定値):

  • CO:1.67% (2.86%)
  • HC:376ppm (469ppm)

 今回は、COおよびHC共に低下している。その理由は何だろうか?おそらく2年前はエンジンをOHした後でまったく未走行であり、ホーニングしたライナーや新品のピストンリングなどのアタリもついてなかったのだろう。

 CO値の減少は、パイロットジェットが2年前は65だったものをその後の試行錯誤でここ6ヶ月は55にしてることにあると推測する。

 HCの減少はエンジンのあたりがついたこととここで紹介の同時点火が効いているのではないかと大いに推測する。すなわち、未燃焼ガスが減少したということである。少なくともそう考えたい。

 尚、点火タイミングはおよそ1,000rpmで25度+に設定している (バキュームアドバンス無し) 。同様にバキュームアドバンス (進角) を使用しない日野のスポーツキット装着の基準値は同回転で20度としている (点火系統 - 基本データ) 。

 CO値:1.67%については、車検をお願いした整備工場で、「この手のクルマにしては低すぎ、もう2番くらい上げても良いのではと意見をいただいた。確かに低速と中速のつなぎにずっと問題を感じていた。先週、パイロットジェットを65にして、少し間をおいて本日も走ってみた。結果は結構大きな違いを感じ、悩んでいた問題が消えたような気がする。少し前に楽しませていただいた軽のスバル・ヴィヴィオの頂上を登り詰めるようなカッ飛び感が頭にこびりついており、わがコンテツを何とかしたいと、その悩みであり、ジェットのセッティングで少し改善されたと感じている。ここのところ、正に “スバル・ヴィヴィオに追いつけ、追い越せ” である。

COMPU-FIRE、DIS、約2年を経て(2016.9.17)

Screen Shot 2016-09-17 at 6.45.25 AM

 約2年前の2015年9月に、米国COMPU-FIRE社の空冷VWの009ディストリビュータ用のDIS (ディストリビュータレス・イグニション・システム) を取り付けました。最初は不安100%で走り始めました。2年、4,000km前後ですが、結果的に安心して走る自信を得るに至っております。

 当初は取り付け上の些細な問題でボデーのアース不良などで瞬間に機能停止、あるいはエンジン始動不可などもありました、しかし、それは使用開始後、2週間程度で解決しました。

 その後は、長距離の出先で2度、DISからオリジナルのコンタクトッポイント方式 (フルトラ) に交換したことがあります。

 1度目は2014年10月の福島県、夜間、セブンイレブンで休止後、走り始めて間もなくエンジン停止となりました。その時はまだ初期なのでてっきりDISがもう逝ったかと、すぐさまオリジナルに戻しました。しかし、この原因はライトスイッチに横にあった電磁ポンプのスイッチを間違えて切っていたのです。単なるヒューマンミスであり、その電磁ポンプのスイッチは手のとどかないところに移動しました。

 2度目は最近の先々月で石川県、出向く際に高速の上り坂やスーパー林道の上り坂で昔、自作CDIで経験した (これは解決できなかった) 息つきのように似た現象です。原因切り分けのためにまずDISからオリジナルに戻しました。しかし、結果は同じなのでDISの問題ではないと判断しました。目下、簡単に出す方法を見出したので試験中です。いずれにせよ、DISの問題ではないことです。

 このように不安を抱えてスタートしたDISではありますが、結果的に無故障で信頼出来るものなりました。やはり、新しいものは自分自身で使い込んでみることが必要です。要は、信ずるものは救われる、正にそのように強い味方に見えてきます。

 尚、COMPU-FIRE社は、PertTronix社に買収されたようです (PerTronix acquires Spyke Inc) 。しかし、COMPU-FIREブランドPertTronix社の一つのブランドとしてそのまま残すようです。

参考情報:

(江澤, Original 2014.10.12)
(Modified / Added 2016.9.17)

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