これは正にたまたま発見したものです。でもそれは結果的に “どんでもない光景” ものでした。
それは右の図の「26」の「バルブ・アッシー (日野純正ナンバー:3 005 3511 01) 」であり、正確な名称は「残圧バルブ」と言われるものです。日本語ではマスターシリンダーの残圧バルブについては多く記述がみられますが、コンテッサについている右のような残圧バルブについては残念ながらグーグルの検索でも中々記述が見当たりません。英語の「residual pressure valve」では正にそのものの的確な記述に行き当たります。
このバルブはコンテッサ1300クーペのようなフロントブレーキがディスク、リアがドラムの構造のクルマのみに取付けられている大切な機能を果たすものです。それは以下のような二つの機能と理解します:
- ホイールシリンダーに圧力がかかってない状態で、若干の圧力 ((0.7kg) を残し、カップシールに “はり” を与え、ブレーキ液の漏れを未然に防ぐ
- 上記の作用によって、ブレーキシューの過大な戻りを防ぎ、ブレーキ踏む始めのフィーリングを向上させる
以上ですが、これはあくまで正常に機能しての話しです。
さて、我が2013年型新造コンテッサ、この残圧バルブに日野のものを使用せず、一般に購入できる米国ECI社の10PSI Valve (0.7kgでコンテツと同じ圧力、と言うよりは教則本的な万国共通の仕様) していました。しかし、日野の純正品 (日野純正ナンバー:3 005 3511 01) を何十年も温存しており、少し色気がでて、これは使わないと思い交換としようと勢い進めました。
そこで旧いもの故、取付をする前にバラして掃除をしました。それが右の写真です。その際に念のためにバラし、元通りに一気に再組付けをし,ブレーキラインに取り付けてしまいました。しかし、どうしても附に落ちない思いがありました。それは中味の部品 (上の日野の図面で、26e、26d、26c、そして26b) がそっくり逆という事でした。はずしてみると案の定、逆でありました。早速、右の写真の如く残圧バルブの理論どおりにして組付けをして、ブレーキラインに戻しました。
さて、何故、このようにアッシーの中味が逆になったかは定かではありません。この逆に状態で後輪のブレーキがどうなるかというと、上記の二つの機能をしないということで,ブレーキの効き具合には何ら問題はないと考えます。しかし、カップの漏れ、フィーリング (最初、シューとドラムの間隙が大きいの践み代が大きく、2度、3度とペダルを踏むと践み代は小さくなるなど) には大いなる影響があるものと考えます。
何と内部の部品の組付けが逆さだった!
以上のようで、ひょっとしたら新品をばらした際の自分の勘違いかなどどもやもやしておりました。しかし、昨年来、中国地方の友人のブレーキ系統の刷新をサポートしている中で大きなことを発見しました。この残圧バルプも奇麗にした方がよいとバラして点検することを薦めました。その結果はその個体の残圧バルブも逆の組付けをされていました。当初、その昔の車検の際の自動車修理屋の間違いではという議論もありましたが、当サイトオーナーの補修部品も同様な逆な組付けあった故、これは当時の日野自動車の間違いであるということの帰結と相成りました。その友人の個体の残圧バルブは間違い無く新車当時からのものと推測するもので、工場から出荷されて以来、そのようになっていたのでしょう。
ではどの程度、この間違った逆の組付けがあったのかということです。ジャック程度の保存している中古品をばらしてみるとそれは正常でした。また、その昔、車台番号PD300-101920のデルダンディのこの部品をバラした際の写真をみるとこれも正常でした。とすると、おそらくあるロットに組付け不良があったと、それはサプライヤーからの納品ですでに逆に組付けがなされていたと推測するもです。それはその時点のコンテツに取付けられたり、あるいは補修部品として市場に出回ったということでしょう。
車台番号の下4桁が3400以降の個体などは注意が必要であり、一度バラしてみると良いと考えます。もし、逆の組付けがあればぜひ、本サイトに参考のためにインプット下さい。また、そうでなくとも、一度、バラス価値のある部分です。ものよっては、バルブのゴム (26c) が機能を果たさなくなっている場合もあります。このバルブ自体はクラッチマスターと同じものである、同等品は普通の部品であり入手に何の問題もありません。開けたら交換するというものです。スプリングはヘタリがありこれは矯正してあげることが必要でしょう。
この残圧バルプは前述のように0.7kgすならち10psiであり、ある意味では規格品です。よって普通に購入できるものです。右の写真はそれを示すものです。写真のもは米国ECI社のものですが、その他多くのものがあります (Summit Racingなど、どこでも同じものを購入可能) 。
尚、この残圧バルブの設置場所ですが、教則本によれば、限りなくブレーキマスターシリンダーの近くとあります。日野のそれは、どのような設計意図があるのか不明ですが、限りなく後輪に近くとまったく逆に位置に設置されています。おそらくセダンとクーペなど違いによる共通化などと組付け性の問題かと推測します。もちろん、当サイトオーナーの2013年型新造コンテッサは、教則本通り、限りなくマスターシリンダーに近い場所に設置したことは言うまでもありません。最近のクルマでは、Metering Valveなどと共に一体化したユニットに組込まれ、エンジンルームの中、すなわちブレーキマスターシリンダーに近接して設置されています。
以上、最近経験した “どんでもない光景” であり、今では大いなるリコールもので、メディアの攻撃もありという程度のものでしょう。しかし、50年も何の問題もなかったのだからと。。。とも。本来のコンテッサを味わいたい、あるいはもっともっとファンツードライブに乗りたいと考えるならばぜひとも皆さんの愛車コンテツをチェックしてみましょう。
【参考文献】
- BRAKE HANDBOOK、Fred Puhn、HP Books (1985)
- ECI社、Residual Pressure Valves
- Hot-Rod Internet Builder page
- F100 Solid Axle to Independent Front Suspension on the Cheap!
(SE, 2015.4.28)
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