日野コンテッサ1300のGR100エンジンのフライホイールに2種類ある。その違いは重量と形状である。以下の写真をみればその違いの特徴は明らかである:
- 軽いタイプ:重量にしておよそ6.6kg。マスを比較的中心近くに。
- 重いタイプ:重量にしておよそ9.7kg。マスは明らかに外側にもってきている。
(上記の重量は家庭用ヘルスメーターで計測、よって設計値など正確な値ではない。)
1964年発売開始以来、GR100エンジンには「軽いタイプ」が組まれている。これは設計値あるいはGR100エンジン、ひいてはコンテッサ1300のドライビングフィーリングの原点と考える。
しかし、セダンではPD100-527499以降、クーペではPD300-101194以降の個体には「重いタイプ」が組まれている。その背景・目的は何であろうか?何しろ50%も重くして、そのマスは最外周にしたということである。
実際のドライビングフィーリングは、「軽いタイプ」はピックアップが良いのでスタートのフィーリングが良く、クルマが軽く感じられることである。つまりキビキビとした軽快感というのが多少なりにも感じられ、正にスポーティかーと言って良い。ドンなコンテッサ1300でも、少しスープアップしたエンジンでは1速、そして2速と後輪のホイールスピンさせることも不可能ではない。
「重いタイプ」はフィーリングは同じエンジンでもまったく異なる。ピックアップなどという言葉は無いに等しい。しかし、低速は低速で、例えば、渋滞の連続するような場合、明らかなトルク感があるので超低速になってもセカンドのままでよくシフトチェンジの必要がないのでオートマのように楽な運転ができる。また、エンジンの回り方が滑らかなので個人的な表現では人生がノンビリしたような長生きが出来そうな感覚と表現したい。これはスポーティカーというものではなく、ファミリーカーと呼んだ方が良い。高速も同様でアクセルオンオフに対して回転の変化が敏感な「軽いタイプ」に比較して「重いタイプ」はトルク感をありパワーを感じるのでドライバーによって好き嫌いがあるようだ。
結果的に非力なコンテッサ1300にはトルク感を感ずる「重いタイプ」の方が大方のドライバーには印象が良かったのではと分析する。日野自動車のこの変更は「軽いタイプ」に対する市場から何らかなフィードバックにあった結果と推測する。
因みに1967年にトヨタ向けのGRエンジン (G型エンジン) 搭載のトヨタ・ブリスカには、「軽いタイプ」が組み込まれた。しかも、クランク、クラッチカバーを含むアッシーでのフルバランスの調整がなされていた。コンロッドのバランスも完全に調整されておりレーシングエンジン並みだった。このようなものが最初から実施されておれば、コンテッサ1300のGR100に対する市場の声は違ったかもと、あるいは付け焼刃的に単に50%も重くすることもなかったと考えたくもなる。
以下の画像のフライホイールは所謂、プロト競技車両用とし制作されたもので、軽量化をはかるためにクラッチと重ならない外周に加工 (穴) をしたものである。また、リングははめ込みでなく一枚ものである。クランク単体のバランスを取り、三位一体 (クラング、フライホイール、クラッチカバー) でフルバランスを取った。フライホイール裏面やクランクの新しそうはドリル穴はその結果である。
これでどうだっかというと、自分の感性が鈍いので何とも言えない。ただ、これをハイリフトカムと組んでF型ミッション、そしてFerodoの材質を使い、よりダイレクトな接続になるMarchl Cushionを持たないクラッチプレートとBorg & Beek型 (通常はRockford型) のクラッチカバーを使用した個体では二輪とよい競争で、正にロケットスタートが可能であり、ひ弱なコンテツでもあっという間に二速で100km/hに達した。と、言うのが実感で今では懐かしい話でもある。
と、書いてみたものの、現代の軽自動車のスーパーチャージャー付きの660ccの Vi Vi O (スバルのヴィヴィオ) などの飛ぶような加速性能には程遠い。ストック仕様のヴィヴィオはつくばで1分13秒台とか、50年前のコンテツにその数字を求めるにはミニマム1600cc以上の排気量にしなければ、あるいは1300ccのエンジンにボデーの超々軽量化やシャシーの大幅なモディファイなど庶民にとっては天文学的な資金を投入しなければならない。ミケロッティ・デザインの優雅なコンテッサ1300クーペにはコンテツなりの楽しみ方を求めよう!
(SE, Original 2015.8.12)
(Added 2015.8.23)
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