日野コンテッサ1300クーぺ並びに1300Sには、当時のスポーツカーあるいはスポーティカーの常套手段として、ベレットやフェアレディなどと横並びに日立製ツインのSUキャブレターが装備されていることは「SUキャブレターいついて」の通りである。SUキャブレターは、ストロンバーグなど通常のものと違って、構造がシンプルで、乗っていてスムーズでまことに気持ちがよい。
そのコールドスタートは、特に変ったものではなく万国共通であり、何ら難しいものではなく、日野コンテッサと言って特別な方法がある訳ではない。ただ、「SUキャブレターいついて」という特徴を知って、あるいは原理を知らずとしても、「SUキャブレターいついて」の始動方法があることだ。それを知ってしまえば何も怖いことはない。零下でも始動は困難ではない。今となっては50年近く前の日野コンテッサ1300ではあるがセル一発であり、それが普通である。かかりが悪い場合は、コンテッサの不調ということではなく、多くの場合、オーナーの知識不足ということが多々ある。
以下に、日野コンテッサ1300に於ける手順を紹介する:
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- IGキーをひねり、電磁プンプの始動を確認する。一定の鼓動、すなわちフロート室にガソリンが規定の高さになるまで待つ。この間、数秒である。
- クラッチを切る。すなわち、クラッチベダルを底まで踏む。これはクラッチが繋がっていることにより、エンジン始動時にミッションの冷えているオイルの固さにより負担を減らすためである。これは結構、大きな抵抗になる、バッテリーにも負担を掛けないためである。
- アクセルプダルから足を離すこと、絶対に踏んではならない。「SUキャブレター」には加速ポンプがない、よってよくある加速ポンプからガソリンを吹き出せるアクセルをあおる必要はない。むしろ、始動時、チェーク効果が減るので踏んだりバタバタさせてはならない。
- 真冬の寒い時期であれば、チョークを目一杯引く。夏、あるいは暖かい時期は、メカ的に正常ならばその必要はほとんどなく、むしろ引くことでかぶる可能性あり。春や秋の比較的寒い時期はそれなりに若干なりとも引かねばならない。
- そして、IGキーをさらにひねり、スタータ・モーターを回す。おそらく電気、点火、混合、リンクなどが正常ならば、零下でも3~5秒でエンジンはなんなく始動する(暖かい時期には1~2秒程度だろう)。
- 始動後、チョークを目一杯引いていたならなば2,500~3,000回転くらいなる、そのままにしておく必要はなく、チョークをすぐに戻し、ホンの若干のアクセルワーク (必要ならば) と共に1,200~1,500回転程度にする。これはエンジンを高回転にしておいてもコンテッサのファンは不当にも強大なので暖まりにくいためである。むしろ、エンジンが冷えている状態でもしっかりと回る回転で十分である。クラッチもこの状態でつないでもよい、おそらくエンジン回転は若干低下する (100~200回転、これはミッションの負荷が増えるためである。また、これは走り出す前に、ミッションオイルを暖めるために有効である。
- おそらく1~3分すれば、真冬でもエンジンは最低限暖まり、チョークを戻して良い。エンジンは700~800回転、所謂アイドル状態で回る。水温はまだ低い状態であり、夏なら良いが真冬ではすぐには走り出す訳には行かない。エンジンオイルやミッションオイルももう少し暖めてあげたい。尚、チョークは必要最低限にすること。
- そして真冬でが少なくと5分以上、上記のように暖気し、水温は50~60度になろう。もちろん、夏あるいは暖かい時期ならばその時間はもっと短い。こうなれば、走り出してよい。ただ、ケースバイケースであるが、水温が80度前後になるまで、ホンの少し、チョークを必要な場合はある。これはコロアイである。あくまで、水温が上がるまではエンジン&ミッションに優しくジェントルにコントロールすべきある。
以上ではある。
車両データ (参考となるポイントのみ) :
- 本始動は、一週間ほどのインターバルを置いた状態である。前日、エンジンを始動、暖めておれば、1~2秒で瞬時に始動する。また、バッテリーは一ヶ月前くらいに軽い充電(1~2アンペアで数時間)を実施。
- バッテリー、40B19R FB:古河バッテリー (今では常識のカルシウムバッテリー、約2年前に近所のホームセンターで購入:旧いのを無料で引き取ってもらえる)
- エンジンオイル:カストロール FORMULA RS 10W-50、100%化学合成オイル (これも近所のホームセンターのバーゲン品、もう35年以上もこのブランドを愛用)
- ミッションオイル:バルボリン 75W-90、100%化学合成オイル (へたったコンテツのミッションではベアリングなどのノイズが出る可能性あり。実験済み)
- プラグ:ボッシュ - プラチナプラグ WR7DP (BPR6ES相当、本当はBP6ES相当のW7DPが良い、35年前からこの銘柄を使用)
- プラグ・コード:Accel シリコン・イエロー、35年もの (どこでも購入できる長めのものをカットすれば良い)
- ディスビューの進角:18度程度、コンデサーは接続せず
- 点火コイル:閉磁型(三菱電機の汎用品、米国NAPAにで購入)
- CDI使用:MSD STREET FIRE PN 5520 (所謂、米車OHV用で、通常使用の3000回転以下ではマルチ点火する。また、消費電力も0.7アンペア程度で10V程度の低電圧でも動作するのが肝。リミッターも内蔵、おまけに価格が誠にリーズナブル)
- 電気配線の接点&接続部 (スイッチ、カップリングなど) 、またアース (ボデーへのボルト締めなど) のすべては、クリーンアップ (決して粗い紙ヤスリなどで磨いてはならない) し、電気の接触抵抗を最大限に減らすこと。よくある本質的解決でないアーシングなどは一切不要。
- ラジエータの冷却ファン:羽根数は3枚 (日野オリジナル (改善後の小型バージョン) 6枚羽根をカット)
- ラジエータの容量:面積は40パーセント程度増、コアは3層 (日野オリジナルは2層 )
- 不凍液は2リッター程度 (近所のホームセンターで購入)
- リザーバタンクは装着
- サーモスタット:日野整の82度 (摂氏)使用
- 本エンジンの走行距離:4万キロを超えたところ。圧縮比は9.0 (クーペ用ヘッド) 。圧縮圧力は、バルプ研磨前で実測で11キロ程度 (整備基準は、4気筒共に11~12キロ、9キロ以下はオーバーホール対象)
- 因に、本車両は片屋根式ガレージの屋外駐車、3層の全天候型のボデーカバー使用、地域的には東京郊外の千葉県松戸市の住宅街 (今年は例年になく庭に霜がおり、水まき用の外の水道は凍る連日です) 。
上記の手順は、日野のマニュアルには書いてない、「SUキャブレター」の原理を学んでの、40年以上に渡る日野コンテッサ1300に対する絶対経験則である。
その他の重要なる留意点:
上記は、ある程度、理想的な始動の場面である。条件によってはこのようには行かず、“クゥークゥー”とバッテリーが弱ったような誠に苦しそうな始動困難がある。これはコンテッサの性格上、タイミングが結構、進み側 (標準で、上死点前 16~18度 / 700rpm) にあるので、始動時のコンディションに関係無く、ピストンが上死点前に点火し、シリンダー圧力がかなり高くなるためと分析している。この場合、タイミングを遅めにすれば、瞬時に始動する。マイナスドライバーでディストリビュータのバキュームアドバンサーのダイアフラムのところにあるネジを緩め、調整位置を目一杯、遅らせる位置に、すなわち4~5度、遅らせる (おそらく、10~12度に) 。そしてIGキーをひねれば一発で始動する。始動したら位置を元に戻し、ネジを締め込んでやればよい。何のマジックもなく、バッテリーが全く弱ってもないのである。これも一つの知恵である。
尚、蛇足だが、このコンテッサの上死点前 16~18度はSUキャブ付きのGRエンジンの肝と考えている。非力なエンジン且つ重量が不当にも重いコンテツを軽快に走らそうすれば、18度は必須である。現代のシェルのスーパーであれば、20度くらいの方が良いと感じる (実際、そうしている) 。
50年近いクルマ、コンテッサではあるが何も特殊なことない。正しいセオリー (理論) を正しく実行するだけであり、何のマジックもない。始動が悪いからと言って、高価なプラグやIGケーブルにするとか、高価なエンジンオイルとか、アーシングなどその他もろもろはまったくもって邪道以外のものでなく、また巷の名ばかりガレージ商売の言葉にまどわされることなく、まずは自分自身で正しいお作法を身に付けたい。
追加、参考:初夏の始動状況 (2012年6月24日)
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参考迄に、外気温が高くなった初夏 (2012年6月24日) の始動状況を紹介する。外気温はおよそ24~25度。チョークは使わず難なく始動する。アイドル・アジャスタは5月連休におよそ半回転絞った。この先、梅雨が開け、本格的な真夏になればさらに1/4~半回転絞ることになろう。いずれにせよ、外気温がこの程度になっておれば、始動は非常に楽である。また、始動後もアイドルは落着いている。
深刻な状況:整備は全体論が必要 (2015年2月8日)
(SE, 2012.2.5, Original)
(改編, 2013.10.26)
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